『HAPPY END』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の最終回。

はっぴいえんど『HAPPY END』(1973年)

HAPPY END

  風来坊
  氷雨月のスケッチ
  明日辺りはきっと春
  無風状態

  さよなら通り3番地
  相合傘
  田舎道
  外はいい天気
  さよならアメリカ さよならニッポン


はっぴいえんどといえば日本語ロックの元祖的存在として有名だけれども、このアルバムはそういう観点だけで評価すべきものでもないように思う。
はっぴいえんどが残した3枚のオリジナル・アルバムの中で、シンプルなロックとしては『はっぴいえんど』がピカイチだと思うし、コンセプト・アルバムとしてのまとまりは『風街ろまん』が一番だろう。それでも敢えて、このアルバムを上げる。
このアルバムは、ほとんど分裂状態にあったはっぴいえんどが、ロサンゼルスでの録音ということで再結集して製作されたのだという。
リトル・フィートのローウェル・ジョージやビル・ペインとの共演も興味深いが、何よりヴァン・ダイク・パークス的世界が溢れる「さよならアメリカ さよならニッポン」は絶品である。たぶん、それまでの日本にはなかった音作りだったのだろう。

ただ一つ言っておきたいことは、「古き良きアメリカを感じながら聴け」ということである。

『黒船』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第9弾。

サディスティック・ミカ・バンド『黒船』(1974年)

黒船

  墨絵の国へ
  何かが海をやってくる
  タイムマシンにおねがい
  黒船(嘉永6年6月2日)
  黒船(嘉永6年6月3日)
  黒船(嘉永6年6月4日)

  よろしく どうぞ
  どんたく
  四季頌歌
  塀までひとっとび
  颱風歌
  さようなら


常に時代の10年先を行っていると言われた加藤和彦率いるサディスティック・ミカ・バンド。はっぴいえんどがアメリカのウェスト・コースト・サウンドを目指したのに対して、イギリス・ロンドンのグラム・ロックを志向していた。
ドラムは元々つのだ☆ひろが叩いていたらしいが、このアルバムの頃には高橋幸宏になっている。リード・ギターは言わずと知れた高中正義。
このバンドは1975年に解散したが、その後女性ボーカルを入れ替えて2度再結成されている(しかも再々結成時は木村カエラ)から、ご存じの人も多いだろう。かく言う僕も、リアルタイムで聴いたのは再結成時(ボーカル・桐島かれん)以降である。
本アルバム収録の「タイムマシンにおねがい」は、多くのアーチストにカバーされている名曲。日本のロック史上、外すことのできない1枚である。

ただ一つ言っておきたいことは、「時代を越えて聴け」ということである。

『センチメンタル通り』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第8弾。

はちみつぱい『センチメンタル通り』(1973年)

センチメンタル通り

  塀の上で
  土手の向こうに
  ぼくの倖せ
  薬屋さん
  釣り糸

  ヒッチハイク
  月夜のドライヴ
  センチメンタル通り
  夜は静か通り静か


鈴木慶一と言えば、「えびす温泉」の司会者として、あるいは細野晴臣の「東京シャイネス・ボーイ」のモデルとして知られて…はいないかもしれないけれども、いろいろなCMに出演していたりして、意外にお茶の間に顔を知られていたりする…かもしれない。
その鈴木慶一率いる、はっぴいえんどと並ぶ初期日本語ロックの代表的バンド・はちみつぱいの唯一のアルバム。代表的バンドなのにアルバムが1枚しかないのはおかしな話だが、実際そうなのだから仕方がない。

グレイトフル・デッドを彷彿とさせる美しいハーモニーと併せて、日本的なウェット感を持っているところが、耳に心地良い。

ただ一つ言っておきたいことは、「飲み明かした夜明けに聴け」ということである。

『スーパー・ジェネレイション』『アワー・コネクション』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の番外編。

雪村いづみ『スーパー・ジェネレイション』

スーパー・ジェネレイション

  序曲(香港夜曲)
  昔のあなた
  ヘイ ヘイ ブギー
  バラのルムバ
  銀座カンカン娘

  東京ブギウギ
  胸の振子
  一杯のコーヒーから
  蘇州夜曲
  東京の屋根の下


この企画、元々は「必聴! 日本のロック名盤10選」にしようと思っていたのだが、そうなると、何がロックなのか、という問題が湧き上がるので、それも七面倒臭いと思って「日本の名盤」にしたのである。が、僕自身の趣旨としては「日本のロック」であるのには違いない。
それからすると、ずいぶん場違いな感のあるアルバムである。

服部良一の楽曲を、美空ひばり・江利チエミと共に「三人娘」と呼ばれた雪村いづみが歌う。「番外編」とはいえ、外れるにも程があると思われるかもしれないけれども、アルバム・ジャケットに書かれた文字が、ポイントである。
「Izumi Yukimura + Ryoichi Hattori + Caramel Mama」。
冒頭の「序曲(香港夜曲)」はヴォーカルなしで、いきなりキャラメル・ママ・ワールドが展開する。そこに雪村いづみのヴォーカルが激しく絡んで行く。例えとしては如何なものかという気はするけれども、初期のジェフ・ベック・グループのような緊張感がある。
少々毛色が違うので、本篇からは外したけれども、これも「名盤」と言って良い。


いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー『アワー・コネクション』

アワー・コネクション

  私自身
  ひとり旅
  六本木ララバイ
  ダンシング
  バレンタイン・デー
  黄昏どき

  真夜中のアマン
  哀愁の部屋
  ウィンター・コンサート
  そしてベルが鳴る
  ムーン・ライト
  バイ・バイ・ジェット


こちらはアーティスト名として明示されているとおり、ティン・パン・アレイとその周辺の人々の演奏。
『スーパー・ジェネレーション』に比べれば、ずいぶんバック・バンドに徹している感はあるけれども、それでも面子が面子である。石田あゆみのヴォーカルを、陰でしっかりと支えている。

ただ一つ言っておきたいことは、「ジャンルを超えて聴け」ということである。

"THE SMILE OF LIFE"

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の番外編。

RONNIE BARRON "THE SMILE OF LIFE"
  ~ロニー・バロン『ザ・スマイル・オブ・ライフ』~
(1978年)

ザ・スマイル・オブ・ライフ

  PRELUDE ~プレリュード~
  MOON SHININ' BRIGHT ~ムーン・シャイニング・ブライト~
  MAKE YOU LOVE ME ~メイク・ユー・ラヴ・ミー~
  HONEY,HONEY ~ハニー・ハニー~
  RUNNING SOUTH,RUNNING NORTH ~ランニング・サウス、ランニング・ノース~
  CARRY IT ON HOME TO ROSIE ~ホーム・トゥ・ロージー~

  SOME PEOPLE ~サム・ピープル~
  DOING BUSINESS WITH THE DEVIL ~悪魔の戯れ~
  MY JEALOUSY ~マイ・ジェラシー~
  SHE DOES IT GOOD ~シー・ダズ・イット・グッド~
  LOVE AFFAIR ~ラヴ・アフェアー~


1960年代末、マック・レベナックが、ブードゥー教の司祭「ドクター・ジョン」をモチーフとしたアルバムを企画して、ロニー・バロンをその中心に据えようとしたのだが、バロン周辺の反対で実現しなかった。そこで、マック自身が DR.JOHN,the night tripper として "Gris-Gris"(『グリ・グリ』)を製作することになり、以後、マックはドクター・ジョンとして活動することになる。
つまり、ロニー・バロンは、ドクター・ジョンになったかもしれない男として知られる人物なのである。
僕の持っている "Gris-Gris" のCDは輸入盤なので詳細は判らないのだが、ドクター・ジョンにこそならなかったものの、ロニーもこのアルバムの製作には参加したようで、「THE BARON OF RONYARDS」とクレジットされているのがロニーなのだろう。

さて、"THE SMILE OF LIFE" であるが、このどこが「邦楽名盤」なのか、とお思いの方も多かろう。が、これは知る人ぞ知るアルバムである。
このCDは 、神田神保町の「タクト」という小さなCDショップで見付けて購入した。この「タクト」、ホームページもこんななのだが、実にマニアックな店である。
80年代のアイドル、ニュー・ミュージック、歌謡曲、落語とカンツォーネに強い、というだけで十分マニアックなのだが、何よりこのアルバムがティン・パン・アレイのコーナーにあった(そんなコーナーがあること自体が既にマニアックだが)ことからも、そのマニアックさを推し量ることができるだろう。
ティン・パン・アレイは細野晴臣を中心とした音楽ユニットだが、何故このCDがそのコーナーに置いてあったかというと、全11曲の内4曲がニュー・オリンズで、残りが東京で録音されていて、その東京録音が、細野晴臣プロデュース、ティン・パン・アレイ周辺のミュージシャンたちが演奏しているものだからである。

ジャケット写真は、お世辞にもセンスがあるとは言えないけれども、裏ジャケットの細野晴臣の寝姿も併せ、味だと思えるような心の余裕は必要である。

ただ一つ言っておきたいことは、「国境を越えて聴け」ということである。

『はらいそ』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第7弾。

細野晴臣&イエロー・マジック・バンド『はらいそ』(1978年)

はらいそ

  東京ラッシュ
  四面道歌
  ジャパニーズ・ルンバ
  安里屋ユンタ
  フジヤマ・ママ

  ファム・ファタール~妖婦
  シャンバラ通信  
  ウォーリ・ビーズ
  はらいそ


伝説のはっぴいえんど解散後、日本語ロックの名盤『HOSONO HOUSE』を発表した細野は、一転、ニュー・オリンズからハワイ、沖縄まで、様々な音楽が入り混じった無国籍なごった煮音楽を創り出す。『トロピカル・ダンディ』(1975年)、『泰安洋行』(1976年)に続いて発表されたこのアルバムは、いわゆる「トロピカル三部作」の掉尾を飾る、チャンキー・ミュージックの到達点である。
「ファム・ファタール~妖婦」では、ドラムの高橋幸宏、シンセサイザーの坂本龍一を従え、「モアベター」な次の展開を予兆する。
このアルバムがなければ、YMOはなく、その後の日本のロック・ポップスはなかったといっても過言ではないだろう。

ただ一つ言っておきたいことは、「遙か彼方を見つめながら聴け」ということである。

『ダイヤルYを廻せ』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第6弾。
今回、年代はさらに一気に飛ぶ。
「邦楽名盤」と銘打ってこのアルバムを取り上げる人はさらに少ないだろうが、そこはあくまでも個人的な趣味趣向によるものなのだから致し方ない。

ヤプーズ『ダイヤルYを廻せ』(1991年)

ダイヤルYを廻せ!

  アンチ・アンニュイ
  Men's JUNAN
  3つ数えろ
  供述書によれば
  夜へ
  ヒステリヤ

  私の中の他人
  Fool Girl
  ミステリアス・ガイ
  ギルガメッシュ
  赤い戦車


今の世ならアングラに括られて終わりになってしまいそうだけれども、当時はこれがお茶の間にも流れていた。それが良かったのか悪かったのかは判らないけれども、そういう時代だったのである。
戸川純のキャラクターから、イロモノ扱いの面もないわけではなかったように思うが、今改めて聴くと、上質のロックであると同時に、テクノ・ポップの正統的な進化の極だという気がする。
Yapoosとしての1st『ヤプーズ計画』とどちらを取るかは迷うところだが、完成度の高さではこちらだろう。
オリジナル・メンバーの比賀江隆男は抜けたけれども、泉水敏郎のひたすら叩きまくるドラムは健在。平沢進がゲスト参加している。

ただ一つ言っておきたいことは、「大音量で聴け」ということである。

『ハルメンズの20世紀』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第5弾。
今回、年代は一気に飛ぶ。
「邦楽名盤」と銘打ってこのアルバムを取り上げる人は少ないだろうが、そこはあくまでも個人的な趣味趣向によるものなのだから致し方ない。

ハルメンズ『ハルメンズの20世紀』(1981年)

ハルメンズの20世紀+8

  趣味の時代
  Q-P-ダンス
  焼ソバ老人
  アニメイション
  少年たち
  シングル・ハンド・ボーイ
  幸福の未来

  マスクト・パーティー
  ジャングル都市
  お散歩
  春の嵐
  ナルシスティック
  ゴールデン・エイジ
  ふにゃふにゃサイボーグ
  母子受精
  マスタード


青山学院大学の佐伯真一教授のご令弟がサエキけんぞうだということは、国文学徒の間では割に知られている話だと思うが、その中で、サエキけんぞうの音楽を実際に聴いたことのある人はそれほど多くはないような気がする。
そのサエキけんぞうが「佐伯健三」時代に結成していたバンド、ハルメンズ。
かく言う僕も、さして聴いているわけではないのだが、このアルバムは名盤の中に加えて良いだろう。

何が何だか訳が判らないと言えば判らない。
上手いんだか下手なんだかさっぱり判らない(たぶん上手いんだろうが…)比賀江隆男のギターやこれでもかと言わんばかりに叩きまくる泉水敏郎のドラムが炸裂する「趣味の時代」を皮切りに、同じフレーズをひたすら繰り返す「焼ソバ老人」や「ジャングル都市」など、かなり理解困難な名(迷)曲が目白押しである。変な音楽だと言えば言えるのだが、その「変」さ加減がこの上なく心地良い。
ゲスト陣も多彩で、戸川純や野宮真貴が参加していることは、マニアの人(?)には堪らないかもしれない。SPYには特段に興味はなかったのだが、佐藤奈々子のボーカルもこのアルバムには嵌っている。
あまりピコピコいう音楽は入れないようにとも思っていたのだけれど、これは別格。

ただ一つ言っておきたいことは、「頭の中を空っぽにして聴け」ということである。

『ごあいさつ』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第4弾。

高田渡『ファースト・アルバム ごあいさつ』(1971年)

ごあいさつ

  ごあいさつ
  失業手当
  年輪・歯車
  鮪に鰯
  結婚
  アイスクリーム
  自転車にのって
  ブルース
  おなじみの短い手紙

  コーヒーブルース
  値上げ
  夕焼け
  銭がなけりゃ
  日曜日
  しらみの旅
  生活の柄


放浪の吟遊詩人・高田渡のファースト・アルバム。

「コーヒーブルース」の、「三条へ行かなくちゃ/三条堺町のイノダっていう/コーヒー屋へね」という詩に誘われて、京都に行けば、欠かさずイノダコーヒに行く。イノダコーヒは何店かあるけれども、そこはやはり三条堺町の本店である。
イノダでは、ミルクと砂糖のたっぷり入ったコーヒーが出る。抜くことは可能だし、コーヒー通はブラックを好むものだけれども、ことイノダに関して言えば、抜かずに頼むのが通らしい。

さて、フォーク歌手というイメージの強い高田だが、このアルバムでは弾き語りばかりでなく、真心ブラザーズによるカバーでも有名な「自転車にのって」や、ファンキーなロックン・ロール・ナンバー「しらみの旅」など4曲で、はっぴいえんどをバックに歌っている。そもそもこの頃の音楽を、フォークとかロックとか、一方にカテゴライズすることがナンセンスなのだろう。
それにしても、これを聴いて、どうにもデビュー・アルバムという気がしない。これ以前にインディーズでの活動があったにしても、である。既に、後年見るような風貌が彷彿とする。
晩年、何故だか注目されて、テレビにも出ていたけれども、このアルバムと、ちっとも印象が変わっていなかった。高田渡は死ぬまで高田渡だった、ということである。

なお、現在出ているCDには、ボーナス・トラックとしてキャラメル・ママ(ただしギターは中川イサト)をバックに録音した「自転車にのって(ファンキーヴァージョン)」が収録されている。矢野顕子のコーラスが秀逸。

ただ一つ言っておきたいことは、「生活をかみしめながら聴け」ということである。

『JAPANESE GIRL』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第3弾。

矢野顕子『JAPANESE GIRL』(1976年)

JAPANESE GIRL

  気球にのって
  クマ
  電話線
  津軽ツアー
  ふなまち唄・PartII

  大いなる椎ノ木
  へこりぷたぁ
  風太
  丘を越えて
  ふなまち唄・PartI


アナログ時代のA面を「AMERICAN SIDE」、B面を「日本面」と称する。
AMERICAN SIDEは、ローウェル・ジョージ率いるリトル・フィートが演奏している。
セールスには恵まれなかったとはいえ、ウェスト・コーストの実力派バンドを日本の一介の新人歌手が引っ張り出している(しかも矢野自ら次々と演奏に注文を出したのだとか)のは、後から思えばかなりの驚きである。
日本面には、細野晴臣・林立夫・あがた森魚・ムーンライダーズが参加。
なお、エンジニアは吉野金二である。

リトル・フィートの何たるかを知らなかった頃は、日本面にばかり目(耳?)が行っていたけれども、改めて聴いてみると、AMERICAN SIDEの演奏も、さすがはリトル・フィートだけのことはある。むろん、日本面がそれに負けていないのだから、当時としてはかなり画期的なことだったろう。
AMERICAN SIDEの「ふなまち唄・PartII」と日本面の「同・I」を聴き比べてみるのも一興…とはいえ廃盤。

ただ一つ言っておきたいことは、「西海岸を想いながら聴け」ということである。