校本『坊っちゃん』(1-5)

凡例

以下、(講)は「下女の清」と章立てする。


   其 時 はもう仕方 がないと観念し て 先方 の云う通 り 勘
(岩)その・ ・・・・・ ・・・・・・・ ・ ・・ ・い・・ ・ ・
(偕)・・とき・・・しかた・・・・・・・ ・ ・・ ・い・とお・ ・
(講)そのとき・・・しかた・・・・あきらめ・ ・・ ・い・とお・、・
(角)その・ ・・・しかた・・・・・・・ ・、二人 ・い・とお・ ・
(集)そのとき・・・しかた・・・・あきらめ・、おやじ・い・とお・、縁を

   当される積 りでいたら、十年来召し使 って         いる 清と云
(岩)・・・・つも・・・・・・・・・・・・ ・・         ・・ ・・い
(偕)・・・・つも・・・・・・・・・・・・ ・・         ・・ ・・い
(講)・・・・つも・・・・・・・・・め・つか・・         ・・ ・・い
(角)・・・・つも・・・・・・・・以上うちで働いて        ・・、・・い
(集)切ら・・つも・・・・・・・・以上うちに住みこみではたらいて・・・ ・・い

   う下女 が、泣きながらおやじに詫 まって、漸  くおやじ
(岩)・・・ ・・・・・・・・・・・あや・・・・ようや・・・・
(偕)・・・ ・・・・・・・・・・・あや・・・・ようや・・・・
(講)・・・ ・・な・・・・・・・・あや・・・・ようや・・・・
(角)・家政婦・・・・・・・・・・・あや・・・・ようや・・・・
(集)・家政婦・・・・・・・・・・・あや・・・・ようや・・・・

   の怒 りが解けた。それにも関  らず    あまりおやじを怖 い
(岩)・・ ・・・・・・・・・・かかわ・・    ・・・・・・・・ ・
(偕)・・ ・・と・・・・・・・かかわ・・    ・・・・・・・こわ・
(講)・いか・・と・・・・・・・かかわ・・、   ・・・・・・・こわ・
(角)・・ ・・・・・・・・・・かかわ・・、   ・・・・・・・こわ・
(集)・・ ・・と・・・・・・・かかわ・・、おれは・・・・・・・こわ・

   とは思わなかった。却 って此 清と云う下女 に気の毒 で
(岩)・・・・・・・・・かえ・・この・・い・・・ ・・・・ ・
(偕)・・・・・・・・・かえ・・この・・い・・・ ・・・・ ・
(講)・・・・・・・・・かえ・・この・・い・・・ ・き・どく・
(角)・・・・・・・・・かえ・・この・・い・家政婦・き・どく・
(集)・・・・・・・・・かえ・・この・・い・家政婦・き・どく・

   あった。此 下女 は もと  由緒のある ものだったそうだ
(岩)・・・・この・・ ・ ・・  ・・・・・ ・・・・・・・・
(偕)・・・・この・・ ・ ・・  ・・・・・ ・・・・・・・・
(講)・・・・この・・ ・、・・  よい家がらの・・・・・・・・
(角)・・・・この家政婦・、・・もと・・・・・家に生まれ・・・・
(集)・・・・この ・ ・、・・は 相当・家柄   ・・・・・・

   が、     瓦解の      ときに零落し  て、
(岩)・・     ・・・      ・・・・・・  ・・
(偕)・・     ・・・      ・・・・・・  ・・
(講)・・徳川幕府が・・した     ・・・おちぶれ ・・
(角)・・明治になってから          ・ちぶれ・・
(集)・・明治になって幕府がなくなった時 ・ ・ちぶれ・・

   つい 奉公    迄 する様 になっ
(岩)・・ ・・    まで・・よう・・・
(偕)・・ ・・    まで・・よう・・・
(講)・・に・・    まで・・よう・・・
(角)・・に住みこみ働きまで・・よう・・・
(集)・・に住みこみではたらく よう・・・

   たのだと聞いて居る。だから婆 さんである。此 婆 さん
(岩)・・・・・・・い・・・・・・ ・・・・・・この・ ・・
(偕)・・・・・・・い・・・・・ばあ・・・・・・このばあ・・
(講)・・・・・・・い・・・・・ばあ・・・・・・このばあ・・
(角)・・・・・・・い・・・・・ばあ・・・・・・このばあ・・
(集)・・・・・・・い・・・・・ばあ・・・・・・このばあ・・

   がどういう因 縁 か、おれを非常  に可愛 がって呉れた。
(岩)・・・・・・ ・ ・・・・・・・  ・・・ ・・・く・・・
(偕)・・・・・・ ・ ・・・・・・・  ・かあい・・・く・・・
(講)・・・・・いんねん・・・・・ひじょう・かわい・・・く・・・
(角)・・・・・わけ  ・・・・・・・  ・かわい・・・く・・・
(集)・・・・・わけ  ・・・・・ひじょう・かわい・・・く・・・

   不思議なものである。母も死ぬ三日前に 愛想 をつかし
(岩)・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・・・
(偕)ふしぎ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・・・
(講)ふしぎ・・・・・・・[ナシ]
(角)・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・ ・・・・
(集)ふしぎ・・・・・・・・・・・・・・・ あいそ・・・・

   た ――おやじも年中  持て余 している ――町内では  乱 暴
(岩)・ ・・・・・・・・  ・・・ ・・・・ ・・・・・・  ・ ・
(偕)・ ・・・・・・・・  も・あま・・・・ ・・・・・・  ・ ・
(講)[ナシ]
(角)・ ・・・・・・・じゅうも・あま・・・・ ・・・・・・、 らんぼう
(集)・。  ・・・・・・  も・あま・・・・。  ・・・・、『・ ・

   者の悪太郎と爪 弾 きをす   る ――此  おれを   無暗 に珍重  し
(岩)・・・・・・・ ・ ・・・   ・ ・・この ・・・   むやみ・・・  ・
(偕)・・・・・・・ はじ・・・   ・ ・・この ・・・   むやみ・・・  ・
(講)[ナシ]
(角)・・・・・・・ ・ ・・・   ・ ・・この ・・・   ・性 ・大切に ・
(集)・・ワル』・つまはじ・にされてい・。  そんな・・・、清はむやみ・だいじに・

   てくれた。おれは 到 底 人に好かれる性 でない とあき
(岩)・・・・・・・・ とうてい・・・・・・・ ・・・ ・・・
(偕)・・・・・・・・ とうてい・・・・・・たち・・・ ・・・
(講)[ナシ]
(角)・・・・・・・・、とうてい・・・・・・たち・・・、・・・
(集)・・・・・・・・ とうてい・・す・・・・格・・・ ・・・

   らめて居たから、他人から木の  端 の様 に取り扱  われるの
(岩)・・・い・・・・・・・・・・  ・ ・よう・・・・  ・・・・
(偕)・・・い・・・・・・・・・・  ・ ・よう・と・あつか・・・・
(講)[ナシ]
(角)・・・い・・・・・・・・・・  ・ ・よう・  あつか・・・・
(集)・・・い・・・・・・・・・・切れはし・よう・  あつか・・・・

   は何 とも思わない、却 って此 清の様 に ちやほやしてく
(岩)・・ ・・・・・・・かえ・・この・・よう・ ・・・・・・・
(偕)・なん・・・・・・・かえ・・この・・よう・ ・・・・・・・
(講)[ナシ]       
(角)・なん・・・・・・。かえ・・この・・よう・、・・・・・・・
(集)・なん・・・・・・・かえ・・この・・・・・ ・・・・・・・

   れるのを不審 に考えた。清は 時 々  台所で 人の居ない時
(岩)・・・・・・ ・・・・・・・ ・ ・  ・・・ ・・い・・・
(偕)・・・・・・ ・・・・・・・ ときどき ・・・ ・・い・・とき
(講)[ナシ]        ・・ ときに  ・・・、・・い・・とき
(角)・・・・・思議・思っ・・・・、ときどき ・・・ ・・い・・・
(集)・・・がふしぎ・思・・・・・ ときどき、・・・ ・・い・・とき

   に 「あなたは 真っ直 で よい御気性だ」と 賞める事 が 時
(岩)・ ・・・・・ ・・・ ・ ・・・・・・・・ ・・・こと・ ・
(偕)・ ・・・・・ ま・すぐ・ ・・・・・・・・ ほ・・こと・ とき
(講)・、・・・・・ ま・すぐ・、・・ご・・・・・ ほ・・こと・、とき
(角)・、・・・・・、ま・すぐ・ ・・ご・・・・・、ほ・・こと・
(集)・、・・・・・、ま・すぐ・ ・・ご性格・・・ ほ・・こと・

   々 あった。然 し おれには 清の云う   意味が分からなかっ
(岩)・ ・・・・しか・ ・・・・ ・・い・   ・・・・・・・・・
(偕)どき・・・・しか・ ・・・・ ・・い・   ・・・わ・・・・・
(講)どき・・・・しか・、・・・・、・・い・   ・・・わ・・・・・
(角)  ・・・・しか・ ・・・・ ・・い・   ・・・わ・・・・・
(集)  ・・・・しか・ ・・・・ ・・い・ことの・・・わ・・・・・

   た。 好い気性なら 清以外 のものも、もう少 し善くして
(岩)・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・
(偕)・・ い・・・・・ ・・・ ・・・・・・・すこ・よ・・・
(講)・・(よ・・・・・、・いがい・・・・・・・すこ・よ・・・
(角)・・ い・・・・・ ・・・ ・人 ・・・・・ ・よ・・・
(集)・・ よ・性格・・、・・・ ・・・・・・・すこ・よ・・・

   くれるだろう  と思った。清がこんな事 を云う度 に  おれ
(岩)・・・・・・  ・・・・・・・・・・こと・い・・ ・  ・・
(偕)・・・・・・  ・・・・・・・・・・こと・い・たび・  ・・
(講)・・・・・・。)・・・・・・・・・・こと・い・たび・、「・・
(角)・・・・・・  ・・・・・・・・・・こと・い・たび・  ・・
(集)・・・・・・に ・・・・・・・・・・こと・い・たび・、 ・・

   は  御世辞は嫌  だ  と   答えるのが常 であった。すると 婆 さ
(岩)・  ・・・・・い ・  ・   ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・
(偕)・  お・・・きらい・  ・   ・・・・・・ ・・・・・・・・ ばあ・
(講)・、 おせじ・きらい・。」・   ・・・・・つね・・・・・・・・、ばあ・
(角)・、 お・・・きらい・  ・いつも・・        ・・・・・ 清
(集)・、「おせじ・きらい・」 ・いつも・・・・   ・・・・・・・・ ばあ・

   んは  夫 だから 好い御気性です  と云っては、嬉 しそうに
(岩)・・  それ・・・ ・・・・・・・  ・い・・・・・ ・・・・
(偕)・・  それ・・・ い・・・・・・  ・い・・・・うれ・・・・
(講)・・、「それ・・・、よ・ご・・・・。」・い・・・・うれ・・・・
(角) ・、「それ・・・ い・・・・・・」 ・い・・・・うれ・・・・
(集)・・ 「それ・・・、よ・ご性格・・」 ・い・・・・うれ・・・・

   おれの顔を眺 めて居る。自分 の力でおれを製造して誇
(岩)・・・・・・ ・・い・・・・ ・・・・・・・・・・・
(偕)・・・・・なが・・い・・・・ ・・・・・・・・・・・
(講)・・・・・なが・・い・・[ナシ]
(角)・・・・・なが・・い・・・・ ・・・・・・・・・・・
(集)・・・・・なが・・い・・じぶん・・・・・・・・・・・

   ってる様 に見える。少々気味がわるかった。
(岩)・・・よう・・・・・・・・・・・・・・・・
(偕)・・・よう・み・・・・・・・・・・・・・・
(講)[ナシ]
(角)・・・よう・・・・・・・・・・・・・・・・
(集)・・・よう・・・・・・しきみ・悪 ・・・・

校本『坊っちゃん』(1-4)

凡例

   母が死んでからは、おやじと兄と三人で暮 して居た。
(岩)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・い・・
(偕)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ら・・い・・
(講)・・・・・・・・・・・・・・・・・・くら・・い・・
(角)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ら・・い・・
(集)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ら・・い・・

   おやじは何 にもせぬ 男で、人の顔さえ見れば  貴様 は 駄
(岩)・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・  ・・ ・ ・
(偕)・・・・なん・・・・ ・・・・・・・・・・・・ きさま・ だ
(講)[ナシ]
(角)・・・・なん・・しない・・・・・・・・・・・・「・・ ・ だ
(集)・・・・な ・・しない・・・・・・・・・・・ 「おまえ・、だ

   目だ駄目だ と 口癖 の様 に云って居た。何 が駄目なんだか
(岩)・・・・・ ・ ・・ ・よう・い・・い・・・ が・・・・・・
(偕)め・だめ・ ・ ・ぐせ・よう・い・・い・・なに・だめ・・・・
(講)[ナシ]
(角)め・だめ・」・ ・ぐせ・よう・言・・い・・・ ・だめ・・・・
(集)め・だめ・」・、・ぐせ・よう・い・・い・・なに・だめ・・・・、

   今  に    分 らない。妙なおやじが有ったもんだ。兄は  実業
(岩)・  ・    ・ ・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・  ・・
(偕)・  ・    わか・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・  ・・
(講)[ナシ]                       ・・、「・・
(角)・  ・なってもわか・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・  ・・
(集)いまだ・    わか・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・  ビジネス

   家 になる  とか云って 頻 りに英語を勉強して居た。元 来
(岩)・ ・・・  ・・い・・ しき・・・・・・・・・い・・・ ・
(偕)・ ・・・  ・・い・・ しき・・・・・・・・・い・・・ ・
(講)・ ・・・。」・・い・・ しき・・・・・・・・・い・・がんらい、
(角)・ ・・・  ・・言・・ しき・・・・・・・・・い・・もともと
(集)マン・・・  ・・い・・、しき・・・・・・・・・い・・もともと

   女のような性分で、ずるいから、仲 がよくなかった。十
(岩)・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(偕)・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(講)・・・・・・・・・・・・・・・なか・・・・・・・・・
(角)・・・・・・格・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(集)・・・・・・格・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・

次部分「ある時」以降、(集)は章分けして「2」とする。


   日に一 遍 位  の割  で 喧 嘩をして居た。ある時  将  棋をさし
(岩)・・・ ・ ぐらい・・  ・ ・ ・・・・い・・・・・  ・  ・・・・
(偕)・・・ ぺんぐらい・・  ・ けんか・・・い・・・・とき ・  ・・・・
(講)・・いっぺんくらい・わり ・、けんか・・・い・・・・とき、しょうぎ・・・
(角)・・・ ぺんぐらい・ペース・、けんか・・・い・・・・・、 ・  ・・やってみ
(集)・・いっぺんぐらい・・合 ・、けんか・・・い・・・・とき ・  ・・ ・

   たら   卑怯  な待 駒 をし て、人 が困 ると嬉 しそうに冷やか
(岩)・・   ・・  ・・ ・ ・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・・・・・
(偕)・・   ・・  ・・ち・ ・・ ・・・ ・こま・・うれ・・・・ひ・・
(講)・・、  ひきょう・まちごま・・ ・・・ ・こま・・うれ・・・・ひ・・
(角)・・、  ひきょう・手   ・使っ・・   ・ ・・うれ・・・・・・・
(集)・・、兄がひきょう・手   ・使っ・・おれ・こま・・うれ・・・・ひ・・

   した。あんまり  腹 が立ったから、手に在っ  た飛車  を   眉
(岩)・・・・・・・  ・ ・・・・・・・・・あ・  ・・・  ・   ・
(偕)・・・・・・・  ・ ・た・・・・・・・あ・  ・・・  ・   ・
(講)・・・・・・・  はら・た・・・・・・・あ・  ・・・  ・、  み
(角)・・・・ まりにも・ ・た・・・・・・・あ・  ・・・  ・   ・
(集)・・・・・・・  ・ ・・・・・・・・・持・てい・・・の駒・、兄のまゆ

       間 へ擲 きつけてやった。眉間 が割れて 少々血が出た。
(岩)    ・ ・たた・・・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・
(偕)    ・ ・たた・・・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・で・・
(講)    けん・たた・・・・・・・・みけん・わ・・、・・・・で・・
(角)    ・ ・たた・・・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・
(集)とまゆの・ ・たた・・・・・・・・皮膚 ・切・・、・し・・・・・

   兄がおやじに言 付けた。おやじがおれを 勘当す   ると言
(岩)・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・   ・・・
(偕)・・・・・・・ つ・・・・・・・・・・ ・・・   ・・い
(講)・・・・・・いいつ・・・・・・・・・・、・・・   ・・い
(角)・・・・・・・いつ・・・・・・・・・・ ・・・   ・・・
(集)・・・・・・いいつ・・・・・・・・・と 親子の縁を切・・い

   い出した。
(岩)・・・・・
(偕)・だ・・・
(講)・だ・・・
(角)・だ・・・
(集)・だ・・・

校本『坊っちゃん』(1-3)

凡例

   おやじは 些 ともおれを可愛 がって呉れなかった。母
(岩)・・・・ ちっ・・・・・・・ ・・・く・・・・・・・
(偕)・・・・ ちっ・・・・・かあい・・・く・・・・・・・
(講)・・・・、ちっ・・・・・かわい・・・く・・・・・・・
(角)・・・・、ちっ・・・・・かわい・・・く・・・・・・・
(集)・・・・、ちっ・・・・・かわい・・・く・・・・・・・

   は兄許 り贔 負にして居た。此 兄はや に色が白くって、
(岩)・・ばか・ひいき・・・い・・この・・・ ・・・・・・・・
(偕)・・ばか・ひいき・・・い・・この・・・ ・・・・・・・・
(講)・・ばか・ひいき・・・い・・[ナシ]
(角)・・ばか・ひいき・・・い・・この・・・け・・・・・・・・
(集)・・ばか・ひいき・・・い・・この・・・け・・・・・・・・

   芝居 の真似をして女形にな   るのが好きだった。おれを
(岩)・・ ・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・
(偕)・・ ・まね・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・
(講)[ナシ]                     ・・・
(角)・・で      ・・を演じ  ・・・・・・・・・・・・
(集)歌舞伎・     ・・のまねをす・・・・・・・・・・・・

   見る度 に  こいつは どうせ碌 なものにはならない  と、お
(岩)・・・ ・  ・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・  ・・・
(偕)・・たび・  ・・・・ ・・・ろく・・・・・・・・・  ・・・
(講)・・たび・、「・・・・、・・・ろく・・・・・・・・・。」・・・
(角)・・たび・、「・・・・、・・・ろく・・・・・・・・・」 ・・・
(集)・・たび・ 「・・・・、・・・ろく・・・・・・・・・」 ・・・

   やじが云った。 乱 暴 で乱 暴 で 行く先 が案 じられる    と 母
(岩)・・・い・・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・・ ・・ ・・・・    ・ ・
(偕)・・・い・・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・・ ・・ ・・・・    ・ ・
(講)・・・い・・・「らんぼう・らんぼう・、ゆ・さき・あん・・・・。」  と、・
(角)・・・い・・・「らんぼう・らんぼう・、いったいどうなってしまうのか」・、・
(集)・・・い・・・「・ ・ ・・ ・ ・、・・・ ・・ ・・・・」   ・、・

   が云った。成程   碌 なものにはなら  ない。御覧 の通 りの
(岩)・い・・・なるほど ・ ・・・・・・・  ・・・ごらん・・ ・・
(偕)・い・・・なるほど ろく・・・・・・・  ・・・ごらん・とお・・
(講)・い・・・なるほど、ろく・・・・・・・  ・・・ごらん・とお・・
(角)・い・・・たしかに ろく・・・・・・ってい・・・見て ・とお・
(集)・い・・・なるほど ろく・・・・・・ってい・・・ごらん・とお・

   始末 である。行く先が案じられたのも無理はない。只
(岩)・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ
(偕)・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ
(講)しまつ・・・・[ナシ]
(角)   ・・・・将来を心配さ ・・・・むり・・・・ただ
(集)   ・・・・・・・・・・・・・・・むり・・・・ただ

   懲役 に行かないで生きて居る許 りである。
(岩)・・ ・・・・・・・・・い・ばか・・・・・
(偕)・・ ・・・・・・・・・・・ばか・・・・・
(講)[ナシ]
(角)刑務所・・・・・・・・・い・ばか・・・・・
(集)刑務所・・・・・・・・・い・ばか・・・・・

   母が病気で死ぬ二 三日前    台所で宙  返 りをして        へっつ
(岩)・・・・・・・・、・・・    ・・・・  ・ ・・・・        ・・・
(偕)・・・・・・・・ ・・・、   ・・・・  ・ ・・・・、       ・・・
(講)・・・・・・・・、・・・、   ・・・ちゅうがえ・・・・、       ・・・
(角)・・・・・・・・、・・・に   ・・・・  ・ ・・・たら、      かま
(集)・・・・・・・・、・・・、おれは・・・ちゅうがえ・・・・、まんなかにあるかま

   いの角 で肋  骨 を撲って 大  に痛 かった。母が大 層 怒 って、
(岩)・・・ ・・  ・ ・う・・ ・い ・・ ・・・・・・たいそう・ ・・・
(偕)・・・ ・あばら・ ・打・・ ・い ・・ ・・・・・・たいそうおこ・・・
(講)・・かど・あばらぼね・う・・、おおい・いた・・・・・・たいそうおこ・・・
(角)ど・・ ・・  ・ ・打・・ とても ・ ・・・・・・    おこ・・・
(集)ど・・ ・・  ・ ・打・・、とても ・ ・・・・・・ひどく おこ・・・

    御前 のようなものの顔は 見たく ない  と云うから、親類  へ
(岩) おまえ・・・・・・・・・ ・・・ ・・  ・い・・・・・・  ・
(偕) おまえ・・・・・・・・・ ・・・ ・・  ・い・・・・・・  ・
(講)「おまえ・・・・・・・・・ ・・・ ・・。」・い・・・・・・  ・
(角)「おまえ・・・・者 ・・・ ・・・ ・・」 ・言・・・・・戚の所・
(集)「おまえ・・・・・・・・・、・・・も・・」 ・い・・・・・戚の家・

   泊 りに行って居た。すると とうとう死んだと云う報知
(岩)・ ・・・・・い・・・・・ ・・・・・・・・い・・・
(偕)・ま・・・・・い・・・・・ ・・・・・・・・い・ ・らせ
(講)とま・・い・・い・・・・・、・・・・・・・・い・ ・らせ
(角)・ま・・い・・い・・・・・、・・・・・・・・い・ ・らせ
(集)・ま・・・・・い・・・・・、・・・・・・・・い・ しらせ

   が来た。そ  う早く死ぬとは思わなかった。 そんな大病
(岩)・・・・・  ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・
(偕)・き・・・  ・・・・・・・・・・・・・・(・・・・・
(講)・き・・・  ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・
(角)・・・・・んなに・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・
(集)・き・・・  ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・

   なら、もう少 し大人 しくすればよかった  と思って 帰っ
(岩)・・・・・・ ・おとな・・・・・・・・・  ・・・・ ・・
(偕)・・・・・・ ・おとな・・・・・・・・・  ・・・・ ・・
(講)・・・・・すこ・おとな・・・・・・・・・。)・・・・、・・
(角)・・・・・・ ・おとな・・・・・・・・・  ・・・・ ・・
(集)・・・・・・ ・おとな・・・・・・・・・  ・・・・ ・・

   て来た。そうしたら 例の        兄が  おれを 親不孝だ、おれ の
(岩)・・・・・・・・・ ・・        ・・  ・・・ ・・・・・・・ ・
(偕)・き・・・・・・・ ・・        ・・  ・・・ ・・・・・・・ ・
(講)・き・・・・・・・、・・        ・・  ・・・「・・・・・・まえ・
(角)・き・・・・・・・ ・・        ・・、    「・・・・・・まえ・
(集)・・・・・・・・・、・・女形のまねをする・・、    「・・・・・・まえ・

   為めに、おっかさんが早く死んだんだ  と云った。口惜
(岩)た・・・・・・・・・・・・・・・・  ・い・・・・・
(偕)た・・・・・・・・・・・・・・・・  ・い・・・くや
(講)た・・、・・・・・・・・・・・・・。」・い・・・くや
(角)た・・・・・母・・・・・・・・・・」 ・言・・・くや
(集)た・・・・・・・・・・・・・・・・」 ・い・・・くや

   しかったから、兄の横っ面 を張っ   て 大 変 叱 られた。
(岩)・・・・・・・・・・・・ ・・・   ・ ・ ・ ・ ・・・・
(偕)・・・・・・・・・・・・ ・・・   ・ たいへんしか・・・・
(講)・・・・・・・・・・・つら・は・   ・、たいへんしか・・・・
(角)・・・・・・・・・・・・ ・ひっぱたい・、・・・・しか・・・・
(集)・・・・・・・・・ほっぺた・ひっぱたい・ たいへんしか・・・・

校本『坊っちゃん』(1-2)

凡例

      庭を東へ二十歩に行き尽 すと  、南上がりに         聊  か許 り
(岩)   ・・・・・・・・・・・ ・・  ・・・・・・         いささ・ばか・
(偕)   ・・・・・・・・ゆきつく・・  ・・・・・・         いささ・ばか・
(講)   ・・・・・・・・い・つく・・  ・・あが・・、        いささ・ばか・
(角)うちの・・・・・・・ ・って      ・を見ると、        小さ
(集)うちの・・・・・・・ ・って行き止まり・・を向くと、少し高いところに小さ

   の菜園  があって、真 中 に 栗 の木が一本立って居る。是 
(岩)・・・  ・・・・・・ ・ ・ ・ ・・・・・・・・い・・これ
(偕)・・・  ・・・・・まんなか・ ・ ・・・・・・・・い・・・・
(講)・やさい畑・・・・・まん・ ・、くり・・・・・・・・い・・これ
(角)な・・  ・・・・・まん・ ・ ・ ・・・・・・・・い・・これ
(集)な・・  ・・・・・まんなか・ ・ ・・・・・・・・いた・これ

   は 命より大事 な栗 だ。実の熟  する時分 は  起き抜け  に脊
(岩)・ ・・・・・ ・・ ・・・・・  ・・・・ ・  ・・・・  ・・
(偕)・ ・・・だいじ・・ ・・・・・  ・・・・ ・  ・・ぬ・  ・背
(講)・、・・・だいじ・くり・・・・じゅく・・じぶん・、 ・・ぬ・  ・うら
(角)・ ・・・・・ ・・ ・・・・・  ・・・に ・、朝・・てすぐ ・裏の
(集)・ ・・・だいじ・・ ・・・・・  ・・季節 ・、朝・・たらすぐ・裏の

    戸を出て 落ちた奴 を拾 ってきて、学校で食う。  菜園  の
(岩) ・・・・ ・・・やつ・・ ・・・・・・・・・・・  ・・  ・
(偕) ・・で・ ・・・やつ・・ ・・・・・・・・・・・  ・・  ・
(講) 門・で・、・・・やつ・ひろ・・・・・・・・・・・  やさい畑・
(角) ・・・・ ・・・やつ・・ ・・・・ ・・・・・・  ・・  ・
(集)木・・・・、・・・やつ・ひろ・・・・・・・・・・・この・・  ・

   西側 が  山城屋 と云う質屋の庭続 きで     、此 質屋に 勘太郎
(岩)・・ ・  ・・・ ・い・・・・・・ ・・     ・この・・・ ・・・
(偕)・・ ・  ・・・ ・い・・・・・つづ・・     ・この・・・ ・・・
(講)・がわ・、 ・・・ ・い・・・・・つづ・・     ・この・・・、・・・
(角)・・ ・、「・・・」・い・・・・・つづ・になっていて・この・・・ ・・・
(集)・・ ・、『・・・』・い・・・・・   ・     ・この・・・ ・・・

   という十三 四 の倅  が居た。勘太郎は 無 論 弱 虫 である。
(岩)・・・・・、・ ・・  ・い・・・・・・ む ろん・ ・ ・・・・
(偕)・・・・・、・ ・せがれ・い・・・・・・ む ろん・ ・ ・・・・
(講)・・・・・、・ ・せがれ・い・・・・・・ む ろんよわむし・・・・
(角)・・・・・、・ ・息子 ・い・・・・・・、もちろん・ ・ ・・・・
(集)・・・・・、・歳・息子 ・い・・・・・・、もちろん・ ・ ・・・・

   弱 虫 の癖 に 四つ目垣 を乗りこえて、栗 を盗 みにくる。
(岩)・ ・ ・くせ・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・・・
(偕)・ ・ ・くせ・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・・・
(講)よわむし・くせ・、・・・がき・の・・・・・くり・ぬす・・・・・
(角)・ ・ ・くせ・ 竹  ・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・・・
(集)・ ・ ・くせ・、竹の ・根を・・・・・、・ ・・ ・・・・・

   ある日の夕方     折 戸の蔭 に隠 れて、とうとう勘太郎を捕
(岩)・・・・・・     ・ ・・かげ・・ ・・・・・・・・・・・・
(偕)・・・・・・、    ・り・・かげ・かく・・・・・・・・・・・つら
(講)・・・・・がた、   ・り・・かげ・かく・・・・・・・・・・・つか
(角)・・・・・・ 、     ・・陰 ・・ ・・・・・・・・・・・つか
(集)・・・・・・ 、おれは  ・・かげ・かく・・・・・・・・・・・つか

   まえてやった。其 時  勘太郎は逃げ路 を失  って、一 生  懸
(岩)・・・・・・・その・  ・・・・・・・ ・・  ・・・・ ・  ・
(偕)・・・・・・・そのとき ・・・・・・みち・うしな・・・・ ・  ・
(講)・・・・・・・そのとき、・・・・に・道 ・うしな・・・いっしょうけん
(角)・・・・・・・その・  ・・・・・・道 ・・  ・・・・ ・  ・
(集)・・・・・・・     ・・・・・・みち・・  ・・・いっしょうけん

   命 に飛びかかって来た。向 うは 二つ許 り年上である。
(岩)・ ・・・・・・・・・・・ ・・ ・・ばか・・・・・・・
(偕)・ ・と・・・・・き・・・こ・・ ・・ばか・・・・・・・
(講)めい・と・・・・・き・・むこ・・、・・ばか・・・・・・・
(角)・ ・・・・・・・き・・・こ・・ ・・ばか・・・・・・・
(集)めい・・・・・・・き・・・ ・・ ・・ばか・・・・・・・

   弱 虫 だが 力は強い。鉢 の開 いた頭を、こっちの胸 へ宛
(岩)・ ・ ・・ ・・・・・・ ・・ ・・・・・・・・・・ ・あ
(偕)・ ・ ・・ ・・・・・・ ・ひら・・・・・・・・・・ ・あ
(講)よわむし・・、・・・・・はち・ひら・・・・・・・・・むね・あ
(角)・ ・ ・・ ・・・・・大きな    ・・・・・・・・ ・あ
(集)・ ・ ・・ ・・・・・でかい    ・・・・・・・・ ・あ

   てて ぐいぐい押し  た拍  子に、勘太郎の頭がすべって、
(岩)・・ ・・・・・・  ・・  ・・・・・・・・・・・・・・
(偕)・・ ・・・・・・  ・ひょうし・・・・・・・・・・・・・
(講)・・、・・・・お・  ・ひょうし・・・・・・・・・・・・・
(角)・・・・・・・・・  ・・  ・・・・・・・・・・・・・・
(集)・・ ・・・・・・てき・ひょうし・・・・・・・・・・・・・

   おれの袷  の袖 の中に這入った。邪 魔になって 手が使え
(岩)・・・・  ・・ ・・・はい・・・・ ・・・・・ ・・・・
(偕)・・・・  ・そで・・・はい・・・じゃま・・・・ ・・・・
(講)・・・あわせ・そで・・・はい・・・じゃま・・・・、・・・・
(角)・・・着物 ・・ ・・・ ・・・・じゃま・・・・ ・・・・
(集)・・・着物 ・・ ・・・はい・・・じゃま・・・・ ・・・・

   ぬ から、無暗    に手を振ったら、袖 の中にある勘太郎の
(岩)・ ・・ むやみ   ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(偕)・ ・・・むやみ   ・・・ふ・・・・そで・・・・・・・・・
(講)・ ・・・むやみ   ・・・ふ・・・・そで・・・・・・・・・
(角)ない・・・めちゃくちゃ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(集)ない・・・やたら   と・・・・・・・       ・・・・

   頭が、右左へぐらぐら靡 いた。    仕舞 に 苦しがって 袖 の
(岩)・・・・・・・・・・なび・・・    しまい・ ・・・・・ ・ ・
(偕)・・・・・・・・・・なび・・・    しまい・ ・・・・・、そで・
(講)・・・左右・・・・・なび・・・    しまい・ ・・・・・、そで・
(角)・・・左右・・・・・なび・・・    最後 ・は・・・・・・・ ・
(集)・・・・・・・・・・動 ・・・勘太郎はしまい・ ・・・・・・・ ・

   中から、おれの二の腕 へ食い付いた。痛 かったから    勘
(岩)・・・・・・・・・・ ・・・つ・・・・ ・・・・・    ・
(偕)・・・・・・・・・・ ・・・つ・・・・ ・・・・・    ・
(講)・・・・・・・・・うで・・・つ・・・いた・・・・・、   ・
(角)・・・ ・・・・・・ ・・・つ・・・・ ・・・・・    ・
(集)・・・・・・・  ・ ・・・・・・・・・・・・・・、おれは・

   太郎を垣 根へ押しつけて置いて、足搦を  かけて向 うへ倒 
(岩)・・・・ ・・・・・・・お・・・・・・  ・・・・ ・・たお
(偕)・・・・ ・・・・・・・お・・・・・・  ・・・・こ・・たお
(講)・・・かきね・お・・・・お・・・・ ・  ・・・むこ・へたお
(角)・・・・ ・・・・・・・お・・・・ ・引っ・・・・こ・・・
(集)・・・・ ・・・・・・・    ・ ・  ・・・むこ・・・

   してやった。 山城屋 の地面は    菜園  より六尺がた   低い。
(岩)・・・・・・ ・・・ ・・・・    ・・  ・・・・・・   ・・・
(偕)・・・・・・ ・・・ ・・・・    ・・  ・・・・・・   ・・・
(講)・・・・・・ ・・・ ・・・・、   やさい畑・・・・・・   ・・・
(角)・・・・・・ ・・・ ・・・・、   ・・  ・・・・くらい  ・・・
(集)・・・・・・『・・・』・土地・、うちの・・  ・・二メートルほど・・・

   勘太郎は 四つ目垣 を半分崩 して、  自分 の領分 へ真 逆 様
(岩)・・・・ ・・・・ ・・・くず・・・  ・・ ・・・ ・・ ・ ・
(偕)・・・・ ・・・・ ・・・くず・・・  ・・ ・・・ ・まっさかさま
(講)・・・・、・・・がき・・・くず・・・  じぶん・・・ ・まっさかさま
(角)・・・・ 竹  ・ ・・・くず・・・  ・・ ・家の庭・まっさかさま
(集)・・・・    ・根の・・といっしょに、じぶん・家の方・まっさかさま

   に落ちて、 ぐう  と云った。勘太郎が落ちるときに、お
(岩)・・・・・ ・・  ・い・・・・・・・・・・・・・・・
(偕)・・・・・ ・・  ・い・・・・・・・・・・・・・・・
(講)・・・・・「・・。」・い・・・・・・・・・・・・・・・
(角)・・・・  ・・  ・言・・・・・・・・・・時 ・・・
(集)・・・・、「・・」 ・い・・・           お

   れの袷  の片袖 がもげて、急  に手が自由になった。其 晩
(岩)・・・  ・・・ ・・・・・・  ・・・・・・・・・・その・
(偕)・・・  ・・そで・・・・・・  ・・・・・・・・・・その・
(講)・・あわせ・・そで・・・・・きゅう・・・・・・・・・・その・、
(角)・・着物 ・・・ ・・・・ ・  ・・・・・・・・・・その・、
(集)・・着物 ・・・ ・・・・・・  ・・・・・・・・・・その・、

   母が 山城屋 に詫び  に行った序 でに 袷  の片袖 も取り返 し
(岩)・・ ・・・ ・・・  ・・・・つい・・ ・  ・・・ ・・・・ ・
(偕)・・ ・・・ ・わ・  ・い・・つい・・、・  ・・そで・と・かえ・
(講)・・ ・・・ ・わ・  ・い・・つい・・、あわせ・・そで・と・かえ・
(角)・・ ・・・ ・あやまり・・・・つい・・、着物 ・・・ ・・・かえ・
(集)・・『・・・』・あやまり・い・・つい・・、    ・・ ・・・かえ・

   て来た。
(岩)・・・・
(偕)・き・・
(講)・き・・
(角)・き・・
(集)・き・・

   此  外   いたずらは大分  やった。大工の兼公と肴  屋の角
(岩)この ほか  ・・・・・だいぶ ・・・・・・・・・・・  ・・・
(偕)この ほか  ・・・・・だいぶ ・・・・・・・・・・・  ・・・
(講)この ほか、 ・・・・・だいぶ ・・・・・・・・・・さかな・・・
(角)これ以・にも、・・・・・だいぶ ・・・・・・・・・・魚  ・・・
(集)この ほか、 ・・・・・ずいぶん・・・・・・・・・・魚  ・・・

   をつれて、茂作の人 参 畠  をあらした事 がある。人 参 の
(岩)・・・・・・・・・ ・ ・  ・・・・・こと・・・・・ ・ ・
(偕)・・・・・・・・にんじん畑  ・・・・・こと・・・・にんじん・
(講)・・・・・・・・にんじん畑  ・・・・・こと・・・・にんじん・
(角)・連・・・・・・にんじんばたけ・・・・・こと・・・・にんじん・
(集)・・・・・・・・にんじん畑  ・・・・・こと・・・・にんじん・

   芽が  出揃 わぬ   処  へ 藁 が一 面 に敷いてあったから、其 上
(岩)・・  ・・ ・・   ところ・ ・ ・・ ・ ・・・・・・・・・・その・
(偕)・・  ・そろ・・   ところ・ ・ ・いちめん・・・・・・・・・・その・
(講)・・  でそろ・・   ところ・、わら・いちめん・し・・・・・・・、そのうえ
(角)・・  ・そろっていないところに、わら・いちめん・し・・・・・・・・その・
(集)・・まだ・そろっていないところに、わら・・ ・ ・・・・・・・・・・その・

   で 三人が半日    相撲 をとりつづけに取ったら、人 参 がみ
(岩)・ ・・・・・    ・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・ ・・
(偕)・ ・・・・・    ・・ ・・・・・・・と・・・・にんじん・・
(講)・、   ・・、三人ですもう・・・・・・・と・・・・にんじん・・
(角)・ ・・・・・、   ・・ ・・・・・・・と・・・・にんじん・・
(集)・ ・・・・・、   すもう・・・・・・・・・・・・にんじん・・

   んな踏みつぶされて仕舞った。古川の持って居る田 圃
(岩)・・・・・・・・・しま・・・・・・・・・い・・ ・
(偕)・・・・・・・・・しま・・・・・・も・・い・・んぼ
(講)・・ふ・・・・・・しま・・・・・・も・・い・たんぼ
(角)・・・・・・・・・しま・・・・・・・・・い・・んぼ
(集)・・・・・・・・・しま・・・・・・・・・い・たんぼ

   の井戸を埋めて 尻 を持ち込ま れた事 もある。      太い孟宗
(岩)・・・・・・・ ・ ・・・・・ ・・こと・・・・      ・・・・
(偕)・・・・・・・ ・ ・も・こ・ ・・こと・・・・      ・・・・
(講)・・・・う・・、しり・も・こ・ ・・こと・・・・      ・・もうそうだけ
(角)・・・・・・・、文句・つけら  ・・こと・・・・      ・・竹
(集)・・・・・・・、文句・いいに来ら・・こと・・・・その井戸は、・・竹

   の節 を抜いて、深く埋めた中から 水が湧き出て、そこ
(岩)・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(偕)・・ ・ぬ・・・・・・・・・・・ ・・わ・で・・・・
(講)・ふし・ぬ・・・・・う・・・・・ ・・わ・で・・・・
(角)・・ ・ぬ・・・・・・・・・・・ ・・わ・・・・まわ
(集)・・ ・ぬ・・ ・・・・・・・・、・・わ・・・・・の

   いら の稲 に水がかかる仕掛 であった。其 時分 は    どんな
(岩)・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・その・・ ・    ・・・
(偕)・・ ・・ ・・・・・・・・け・・・・・その・・ ・    ・・・
(講)・・ ・いね・・・・・・しかけ・・・・・そのじぶん・、   ・・・
(角)り  ・・ ・・・・・・しかけ・・・・・その・  ・、   ・・・  
(集)あたり・・ ・・・・・・しかけ・・・・・そのころ ・、おれは・・・

   仕掛 か知らぬ から、石や棒ちぎれをぎゅうぎゅう井戸の中
(岩)・・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(偕)・・け・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(講)しかけ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(角)しかけ・・・ない・・・・・・   ・・・・・・・・・・・
(集)しかけ・・・ない・・・・・・ き・・・・・・・・・・・・

   へ挿し込んで、水が出なくなったのを見届 けて、うち
(岩)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・
(偕)・さ・こ・・・・・で・・・・・・・・とど・・・・・
(講)・さ・こ・・・・・で・・・・・・・・とど・・・・・
(角)・さ・こ・・・・・・・・・・・・・・とど・・・・・
(集)・さ・こ・・・・・・・・・・・・・・とど・・・・・

   へ帰って飯 を食って居たら、古川が真赤 になって怒鳴
(岩)・・・・・ ・・・・い・・・・・・・・ ・・・・・・
(偕)・・・・・ ・・・・い・・・・・・まっか・・・・どな
(講)・・・・めし・・・・い・・・・・・まっか・・・・どな
(角)・・・・・ ・・・・い・・・・・・まっか・・・・どな
(集)・・・・・ ・・・・い・・・・・・まっか・・・・どな

   り込んで来た。       慥 か 罰金を出して 済んだ様 である。
(岩)・・・・・・・       たし・ ・・・・・・ ・・・よう・・・・
(偕)・こ・・き・・       たし・ ・・・だ・・、す・・よう・・・・
(講)・こ・・き・・       たし・、・・・だ・・ す・・よう・・・・
(角)・こ・・き・・       たし・、 ・・払っ・ す・・よう・・・・
(集)・こんできた。※そのときは、たし・  ・・払っ・ す・・よう・・・・
   ※それはそうだろう、水がなければ稲が枯れてしまう。

校本『坊っちゃん』(1-1)

凡例

     一

章題、(岩)(偕)は同じ。
(講)「第一編 わんぱく時代 いたずらっ子」
(角)は「一」の後に「負けん気が強く、いたずら好きの坊っちゃん。学校を卒業して四国の中学校の教師に。かわいがってくれた家政婦の清ともわかれ、一人、四国へ旅立って行く坊っちゃん。」とする。
(集)は「プロローグ」とした後に「1」とする。


   親譲 りの無鉄 砲 で 小供 の時 から 損 ばかりして居る。
(岩)・・ ・・・・ ・ ・ こども・・ ・・ ・ ・・・・・い・・
(偕)・ゆず・・・・ ・ ・ 子ども・とき・・ ・ ・・・・・い・・
(講)・ゆず・・むてっぽう・、子ども・とき・・、そん・・・・・い・・
(角)・ゆず・・・・ ・ ・、子ども・・ ・・ ・ ・・・・・い・・
(集)・ゆず・・むてっぽう・、子・・・・・・・、・ ・・・・・い・・

   小学校に居る時分  学校の二階から飛び降りて 一週間程 
(岩)・・・・い・・・  ・・・・・・・・・・・・ ・・・ほど
(偕)・・・・い・・・  ・・・・・・・・・お・・ ・・・ほど
(講)・・・・い・じぶん、・・・・・・・と・お・・ ・・・ほど
(角)・・・・い・・、  ・・・・・・・・・・・・、・・・ほど
(集)・・・のとき、   ・・・・・・・・・お・・・・・・ほど

   腰 を抜かした事 がある。 なぜ そんな無闇    をした  と聞く
(岩)・ ・・・・・こと・・・・ ・・ ・・・・・    ・・・  ・・・
(偕)・ ・ぬ・・・こと・・・・ ・・ ・・・むやみ   ・・・  ・・・
(講)こし・ぬ・・・こと・・・・「・・、・・・むちゃ   ・・・。」・・・
(角)・ ・ぬ・・・こと・・・・ ・・ ・・・むちゃ   ・・・  ・・・
(集)・ ・ぬ・・・こと・・・・ ・・ ・・・むちゃなこと・・・、 ・・・

   人があるかも知れぬ 。別 段 深い理由でもない。新築の   
(岩)・・・・・・・・・ ・べつだん・・・・・・・・・・・・
(偕)・・・・・・し・・ ・べつだん・・・・・・・・・・・・
(講)・・・・・・し・・ ・べつだん・・わけ・・・・・・・・
(角)・・い・・・し・ない・べつに ・・・・・・・・・校舎・
(集)・・・・・・し・ない・べつに、・・・・は ・・・・・・校舎の

   二階から首を出して居たら、同級生の一人が 冗  談 に、 
(岩)・・・・・・・・・い・・・・・・・・・・ ・  ・ ・・
(偕)・・・・・・だ・・い・・・・・・・・・・ ・  ・ ・・
(講)・・・・・・だ・・い・・・・・・・・・・ じょうだん・・
(角)・・・・・・・・・い・・・・・・・・・・、じょうだん・・
(集)・・・・・・・・・い・・・・・・・・・・・・  ・ ・・

    いくら威張っても、そこから飛び降りる事 は出来まい。
(岩) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・こと・・・・・・
(偕) ・・・いば・・・・・・・・・・お・・こと・でき・・・
(講)「・・・いば・・・・・・・・と・お・・こと・でき・・・
(角)「・・・いば・・・・・・・・・・・・・こと・でき・・・
(集)「・・・いば・・・・・・・・・・お・・こと・でき・・・

   弱 虫 やーい。 と 囃 したからである。小使 に負ぶさって
(岩)・ ・ ・・・・ ・ ・ ・・・・・・・・・・ ・お・・・・
(偕)・ ・ ・・・・ ・ はや・・・・・・・・・・ ・お・・・・
(講)よわむし・あ・・」・ はや・・・・・・・・・・い・お・・・・
(角)・ ・ ・・・」 ・、はや・・・・・・・・事務員・お・・・・
(集)・ ・ ・・・」 ・、はや・・・・・・・・用務員・お・・・・

   帰って来た時 、おやじが大きな眼をして  二階位  から飛
(岩)・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・  ・・ぐらい・・・
(偕)・・・き・とき・・・・・・・・目・・・  ・・ぐらい・・・
(講)・・・き・とき・・・・・・・・目・・・、「・・くらい・・と
(角)・・・き・・ ・・・・・・・・目・・・、「・・ぐらい・・・
(集)・・・き・とき・・・・・・・・目・・・ 「・・ぐらい・・・

   び降りて 腰 を抜かす奴 があるか  と云ったから、 此 次 は 
(岩)・・・・ ・ ・・・・・ ・・・・  ・い・・・・・ この・ ・
(偕)・お・・ ・ ・ぬ・・やつ・・・・  ・い・・・・・ このつぎ・
(講)・お・・、こし・ぬ・・やつ・・・・。」・い・・・・・「このつぎ・、
(角)・・・・、・ ・ぬ・・やつ・・・・」 ・言・・・・・「この・ ・、
(集)・お・・・・ ・ぬ・・やつ・・・・」 ・い・・・・・「この・ ・、

   抜かさずに飛んで見せます  と答えた。
(岩)・・・・・・・・・・・・  ・・・・・
(偕)ぬ・・・・・・・み・・・  ・・・・・
(講)ぬ・・・・と・・み・・・。」・・・・・
(角)ぬ・・・・・・・み・・・」 ・・・・・
(集)ぬ・・・・・・・み・・・」 ・・・・・

   親類のものから 西洋製の  ナイフを貰 って 奇麗 な刃を
(岩)・・・・・・・ ・・・・  ・・・・もら・・ きれい・・・
(偕)・・・・・・・ ・・・・  ・・・・もら・・ きれい・・・
(講)・・・・・・・、・・でできた・・・・もら・・、きれい・・・
(角)・戚   ・・ ・・・・  ・・・・もら・・、きれい・・・
(集)・戚・・・・・、・・・・  ・・・・もら・・、きれい・・・

   日に翳 して、友達 に見せて居たら、     一人が  光る事 は光
(岩)・・・ ・・・・・ ・・・・い・・・     ・・・  ・・こと・・
(偕)・・かざ・・・・だち・・・・い・・・     ・・・  ・・こと・・
(講)・・かざ・・・・だち・・・・い・・・     ・・・、「・・こと・・
(角)・・かざ・・・・だち・・・・い・・・その中の ・・・、「・・こと・・
(集)・・かざ・・・・だち・・・・い・・・そのうちの・・・、「・・こと・・

   るが 切れそうもない  と云った。     切れぬ 事 があるか、何
(岩)・・ ・・・・・・・  ・い・・・     ・・・ こと・・・・・・
(偕)・・ ・・・・・・・  ・い・・・     ・・・ こと・・・・・・
(講)・・、・・・・・・・。」・い・・・    「・・・ こと・・・・・なん
(角)・・、・・・・・・・」 ・い・・・    「・・ないこと・・・・・なん
(集)・・、・・・・・・・」 ・い・・・おれは、「・・・ こと・・・・・なん

   でも切って見せる  と受け合った。 そんなら 君 の指を切
(岩)・・・・・・・・  ・・・・・・・ ・・・・ ・ ・・・・
(偕)・・・・・み・・  ・・・あ・・・ ・・・・ ・ ・・・・
(講)・・・・・み・・。」・う・あ・・・「・・・・、きみ・・・・
(角)・・・・・み・・」 ・・・あ・・・「・・・・ きみ・・・・
(集)・・・・・み・・」 ・保証し ・・「・・・・、きみ・・・・

   って見ろ      と注文したから、     
(岩)・・・・      ・・・・・・・・
(偕)・・み・      ・・・・・・・・
(講)・・み・。」    ・・・・・・・・
(角)・・み・」     ・言われ・・・・
(集)・・み・」とそいつが ・・・・・・・

        何 だ 指位   此 通 りだ  と 右の手
(岩)     ・ ・ ・くらい この・ ・・・・・ ・
(偕)     なん・ ・ぐらい この・ ・・・・・ ・
(講)    「なん・、・くらい、このとお・・。」・ ・・・
(角)    「なん・、・ぐらい このとお・・」 と、・・・
(集)おれは、「なん・、・ぐらい このとお・・」 と ・・・

   の親指の甲    を はす に切り込んだ。幸    ナイフが小さいの
(岩)・・・・・    ・ ・・ ・・・・・・・・い   ・・・・・・・・
(偕)・・・・・    ・ ・・ ・・・こ・・・さいわい ・・・・・・・・
(講)・・・・・    ・、・・ ・・・こ・・・さいわい、・・・・・・・・
(角)・・・・・    ・ ななめ・・・こ・・・さいわい ・・・・・・・・
(集)・・・・・のところ・、ななめ・・・こ・・・さいわい ・・・・・・・・

   と、親指の骨 が堅 かったので、今 だに親指は手に付い
(岩)・・・・・・ ・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・
(偕)・・・・・・ ・かた・・・・・・いま・・・・・・・つ・
(講)・・・・・ほね・かた・・・・・・いま・・・・・・・つ・
(角)・・・・・・ ・かた・・・・・・いま・・・・・・・つ・
(集)・・・・・・ ・かた・・・・・・いま・・・・・・・つ・

   ている。しかし 創 痕 は死ぬまで消えぬ 。
(岩)・・・・・・・ ・ ・ ・・・・・・・・ ・
(偕)・・・・・・・、傷 あと・・・・・・・・ ・
(講)・・・・・・・・きずあと・・・・・・・・ ・
(角)・・・・・・・、傷 あと・・・・・・・ない・
(集)・・・・・・・・きずあと・・・・・・・ない・

校本『坊っちゃん』(凡例)

[凡例]

近代における小説は、著者が執筆した原作に近似した形態で流布されるのが通常である。
が、こと児童書に関して言えば、著者原作から乖離した本文で刊行されることが、しばしばあるように見受けられる。
児童書としての性質上、読者たる児童の読解を容易ならしむる本文に改変することが、一切許容されないとは言い切れない。けれども、児童書がそういった読者層の制約から自由ではありえないからこそ、その乖離を理解し認識したうえで、どの書籍を児童に与えるかを判断する責務が、大人にはあると思量する。が、現状では、その判断を行なうだけの材料が、提供されているとは看做しがたい。
そこで、児童向けに出版された、夏目漱石の『坊っちゃん』の諸本の異同を比較して、その資料を提供しようとする。
当「校本」は、『漱石全集/第三巻』(岩波書店、昭和三一年)を底本とするけれども、児童向け書籍の本文の対校という目的を鑑みて、表記は新字新かなを採用する。
対校する本文は、底本と表記が一致する場合には「・」を付し、一致しない場合のみ、該当の本文を記載する。該当する本文がない場合には空白とするけれども、大幅な缺文がある場合、[ナシ]と記載することがある。
底本の改行に合せて改行するが、校異の関係で長くなる場合に、途中で底本にない改行を入れる場合がある。
また、長大な加筆が加えられていて行内に記載し切れない場合、※印を付して、行外に記載する場合がある。
なお、本来なら、ルビをも含めて校異の対象とすべきところだが、煩を避けて割愛した。改行や行開けについても、再現するのが困難であり、看過せざるをえなかった。
そのような限定があるとはいえ、教科書にもしばしば採択される作品だから、青少年へ提供する本文のあり方を考えるうえで、裨益するところがないともいえないのではあるまいか。

対校に使用した本文とその略称は、以下の通り。なお、参考までに、書肆の想定する各書の読者の年齢層を併記する。

 岩波少年文庫(岩波書店、平成一四年)…(岩) 中学以上
 偕成社文庫(偕成社、昭和六三年)…(偕) 小学上級から
 講談社青い鳥文庫(福田清人編。講談社、平成一九年)…(講) 小学上級から
 角川つばさ文庫(後路好章編。角川書店、平成二五年)…(角) 小学上級から
 集英社みらい文庫(森川成美構成。集英社、平成二三年)…(集) 小学中級から

1001

なんだかんだで、当ブログのエントリの数が1001に達した。2010年8月に始めたのだから、ほぼ丸5年も掛かったわけである。
こつこつと毎日1エントリずつ書いておれば、2年も前に到達したはずの数字であるが、書きたい時に書きたいことを書くのが、言い換えれば、書きたいことがなければ無理に書かないのがモットーだから、まあそんなものかと思わないでもない。
良く5年ももったものだという気もしないではないけれども、これまでのエントリを見返してみたら、纏まりのない駄文の寄せ集めに過ぎないのに違いないから、このレヴェルなら続いているのも不思議ではない。
それで、これを機に、纏まったものを上げてみようかと思って、ひとつの企画を始めてみることにした。…

…というのは真っ赤なウソで、たまたま最近思い付いただけのことである。
ただ、何かの切っ掛けをデッチ上げなければ、気力が続きそうもない企画だから、1001エントリにかこつけて、始めてみようと思うのである。

それで、やろうと思ったのは、『坊っちゃん』の校本である。近代の小説の校本など意味がないと思われるかもしれないけれども、対象とするのが児童向け書籍であることがミソである。
子供向けに判りにくいところを書き換えるのは多少なら致し方ないとして、どの本がどの程度原作と乖離しているのか、もしくはしていないのかを、確かめてみようと思ったのである。
一般の方には、「校本」というものは馴染がないだろうから、見ても何のことだか判らないかもしれないけれども、纏まれば、意味がないとも言えないだろうと思う。
…のだが、迂闊にも作業を始めてから気づいたのだが、『坊っちゃん』という作品、案外長い。芥川の『羅生門』にでもしておけば良かった、と思っても最早手遅れである。
1001エントリにかこつけたところで、気力が続きそうもない。