体調不良

先日、この上なく体調が悪く、出掛けなければならない所用があったので外出はしたものの、高熱のためにフラフラになりながら何とかこなしたことがあった。それで思い出した学生時代のこと。

大学4年の時、丁度その年に定年を迎える近世文学の大家T教授の授業を受けていた。春先から夏過ぎまではそれほど問題はなかったと思うのだが、秋口から体調を崩しがちになり、冬になると、ご自宅から駅、駅から大学までの間に当たる冷気のために、大学に着く頃には教室に向かうのも難しいほどの状態になり、休講になることが増えて来た。
それでもT教授の授業を取る機会は今後ないわけだし、他の学生も、事務員や弟子が休講を知らせに来るまで教室でおとなしく待っていた。が、T教授が教壇に立つことは、ついぞなくなっていた。
そんなある日のこと、弟子が教室の入口で、「先生がお話をされます」と言う。そして間もなく、T教授がとても大儀そうなご様子で、教室に入って来られた。
今日は体調が悪くとても授業ができない、誠に申し訳ない、という趣旨のことを述べられて、「このつまらねェ顔を見せたってェことで勘弁してもらいたい」ときっぱりと仰ると、そのまま教室を後にされた。
僕の母校にはその当時エレベーターがなく、教室には階段を昇って来なければならなかった。T教授の体調ではそれだけでも大変なことを、学生は皆判っていたから、そんな挨拶などしなくても誰も文句を言う者はなかったろうに、けじめを付けようと無理をされたのだろう。
T教授の顔を見たのはそれが最後で、僕らが卒業して間もなく亡くなられた。
授業こそなかったものの、定年まで在籍し続けて、卒業生を送り出されたわけである。嗚呼、何とカッコ良い人生だったことか。
[ 2013/06/30 00:52 ] | コメント(2) | TB(0) |  TOP△

附箋を剥がす(10)

附箋はとっくのとうに剥がしてあったのだが、下書きに入れたままで置いてあったのを上げることにする。

『暗夜行路』より。

彼の烟草はのんでもよし、のまなくてもよしと云う程度のものだった。それはサモアと云う、函に黒ン坊のついた烟草だった。
「小稲ちゃんありました」こう云って登喜子が入って来た。(前篇・第一・4)

「登喜ちゃんは遠出ですが、小稲ちゃんの方はたしかにあります」(前篇・第一・8)

こう云う恐しい方法でも、百に一つ、千に一つ死なずに済む機会が与えられてある以上、悪い精神の跳梁に打克てない場合は全く恐しいものになると思った。(前篇・第一・11)

「石本さんの誰か、この辺に来る人があるかい?」石本は何気なく訊いた。本家の方に甥が沢山あった。そしてそれらは道楽者が多かった。
「ええ、あるわ」こういって、女は女中と眼を見合せて変な笑い顔をした。(前篇・第二・11)


現代口語なら、ふつう「いる」というだろうところだが、それを「ある」と言っている。
「今は昔、竹取の翁といふ者、ありけり」(竹取物語・冒頭)というようなのと、同じ「ある」である。

「いろはうた」

「いろは歌」最古の全文、土器に…平安京跡

京都市中京区の平安京跡で出土した12世紀末~13世紀初めの土器に、平仮名の「いろは歌」のほぼ全文が墨で書かれていたことが分かった。

京都市埋蔵文化財研究所が27日発表した。いろは歌の全文がわかる資料では国内最古という。

貴族や皇族の邸宅「堀河院」跡の発掘調査で1983年に出土した土師器の皿(直径9センチ)の裏側に、赤外線などを用いた再調査によって、いろは歌47文字のうち43文字が確認された。

右端に最後の行の「ゑひもせす」があり、次の行に書き出しの「いろはにほへと」がある。最初は余裕を持って書き進めたが余白がなくなり、最後の行を右端に書いたとみられる。字は拙く、「よたれそ」を「よたそれ」と書き損じており、犬飼隆・愛知県立大教授(日本語史)は「和歌を習い始めたばかりの貴族の子弟が一生懸命書いたとも想像でき、かわいらしくも思える」と話す。(YOMIURI ONLINE)


「堀河院」と言えば、伊勢物語(6段)に「堀河のおとど」と出る藤原基経(836-891)の屋敷として有名だが、12世紀末〜13世紀初の頃、誰が住んでいたのかは存知しない。『讃岐典侍日記』で知られる堀河天皇(1079-1107)の里内裏だったのよりも後の時代である。
もっとも、僕の持っている歴史辞典によれば、堀川院は「保安年間(1120-23)の焼失後絶えた」とあって、実際のところどういう経緯なのかは判らない。

なお、この記事にの「いろは歌の全文がわかる資料では国内最古」には誤認があって、いろはうたそのものは、『金光明最勝王経音義』にある承暦3年(1079)のものが最古である。さらに揚げ足を取れば、確認できるのは「47文字のうち43文字」なわけだから、『金光明最勝王経音義』が「全文」なのに対して、こちらは「ほぼ」全文である。
ただし、『金光明最勝王経音義』は漢字で書かれているから、これはかなでほぼ全文が書かれたものとして、最古ということである。
さらにさらに揚げ足取りだが、「和歌を習い始めたばかりの貴族の子弟が」というのは、「文字を習い始めたばかりの貴族の子弟が」ではなかろうか、と、思う。

文字を見ると、素朴というよりはむしろ稚拙で、美術的な価値は感じられない。記事のとおり、子供が文字の手習いで書いたものが、偶々残ったものなのだろう。むろん、いろはうたが手習いの教材に使われていたというのも、特段新しい知見ではない。

とはいえ、こういう記事を見ると、意味もなく心躍る…とまでは行かないけれども、心揺れるくらいのものはあって興味深い。

「心境は十分わかる」

「外国語使いすぎ」NHK提訴の男性に専門家も「心境は十分わかる」

NHKは放送番組や番組名で外国語を使いすぎるのをやめるべきだ-。こんな訴えが名古屋地裁であったことが26日、明らかになった。外国語の乱用で内容を理解できず、精神的苦痛を受けたとして、71歳の男性がNHKに対し141万円の慰謝料を求めたこの裁判。公共放送NHKのカタカナ言葉使用に一石を投じる形となった訴えを、司法はどう判断するのか。

「カタカナで表記すると意味が変わるのか。普遍的な報道に、見栄えや格好良さを求める必要があるのか」。こう話すのは、提訴した岐阜県可児市の任意団体「日本語を大切にする会」で世話人を務める高橋鵬二さんだ。

訴状では、NHKが番組内で「リスク」や「ケア」など、外国語を使わなくても表現できる言葉を多用しており、番組名にも「BSコンシェルジュ」「ほっとイブニング」など外国語を乱用していると主張。視聴者の大部分が理解できる言語で製作されておらず、憲法で保護された知る権利や幸福追求の権利を侵害しているという。

また、「NHKは国家機関が関与する公共放送で、広範囲で視聴できるため影響力が強い」と指摘。公共性の高いNHKが日本語を軽視する姿勢にも強い疑問を呈している。高橋さんは一昨年末、NHKに公開質問状を提出。しかし、回答がなかったため、訴訟に踏み切ったという。

平成14年から18年まで行われた国立国語研究所の『「外来語」言い換え提案』に関わった鳥飼玖美子・立教大特任教授=言語コミュニケーション論=は「新しく導入される外国語は増加傾向にある。さまざまな文化を取り入れる日本語の利点は残しながらも、あらゆる世代が理解できる言葉を選び、残していくべきだ」と話す。

特に、高齢になって利用機会が多くなる福祉分野や医療分野で外国語が多用される傾向があるといい、「公共放送だからこそ、外国語やカタカナ語が苦手な少数派の意見に配慮してほしいと考える男性の心境は十分理解できる」という。

一方、NHKは「訴状の内容を確認していないため、コメントを差し控える」としている。

(msn産経ニュース)


こういう問題は司法がジャッジメント…いや、判断すべきことではないと思うし、判断するにしても勝訴の見込みはまずないだろうと思う。が、「専門家も『心境は十分わかる』」という見出しから、記者の提訴者へのシンパシイ…いや、共感が感じられる記事ではある。
提訴した本人も、お金が取れるとはまったく思っていないだろうけれども、確かに「心境は十分わかる」。

もっとも、「リスク」や「ケア」などということばは、NHKだけではなく、産経だってごくユージョアリー…いや、ふつう(…もう面倒臭いのでやめる)に使っていることばだし、僕もふつうに使っている。もっとわけのわからないカタカナことばだって…。
だから、NHKだけを非難することは到底できないし、ここまでカタカナことばが溢れて来ると、直ちに「外国語を使いすぎるのをやめる」のは難しい。
そもそも、これまでになかった概念で、置き換えるべき適当な日本語がない場合も多々あるわけである。明治時代のようにそれを漢語に置き換えれば良いかと言えば、それでたちどころに意味が判りやすくなるかどうかは疑問である。

そんなわけで、結論はないのだけれども、気になるニュースだったので、取り上げておいた。

『センチメンタル通り』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の第8弾。

はちみつぱい『センチメンタル通り』(1973年)

センチメンタル通り

  塀の上で
  土手の向こうに
  ぼくの倖せ
  薬屋さん
  釣り糸

  ヒッチハイク
  月夜のドライヴ
  センチメンタル通り
  夜は静か通り静か


鈴木慶一と言えば、「えびす温泉」の司会者として、あるいは細野晴臣の「東京シャイネス・ボーイ」のモデルとして知られて…はいないかもしれないけれども、いろいろなCMに出演していたりして、意外にお茶の間に顔を知られていたりする…かもしれない。
その鈴木慶一率いる、はっぴいえんどと並ぶ初期日本語ロックの代表的バンド・はちみつぱいの唯一のアルバム。代表的バンドなのにアルバムが1枚しかないのはおかしな話だが、実際そうなのだから仕方がない。

グレイトフル・デッドを彷彿とさせる美しいハーモニーと併せて、日本的なウェット感を持っているところが、耳に心地良い。

ただ一つ言っておきたいことは、「飲み明かした夜明けに聴け」ということである。

インデックス猫クリップ

先日、浅草橋のシモジマに買物に行った時に見つけたもの。

猫好きの人にとって、肉球はどうにも堪らないものである(…らしい)。そんな猫好きの人にはこらえ切れない(…だろうと思う)「インデックス猫クリップ」。
クリップに猫が付いているだけと言えばそれまでなのだが、「肉球を押すと先端が開くクリップです」という商品説明を見たら、猫好きの人なら思わず買ってしまうだろう(…たぶん)。

インデックス猫クリップ

もともとは猫も何も付いていない「プッチンクリップ」という実用本位の製品だったらしいのだが、そこに猫を付けた…だけなら大したことはないのだけれども、クリップの先端を開くためのふくらみに肉球の絵を描いてしまったところが、大いにいかしている。
猫好き、殊に猫の肉球好きの人にはおススメ。
もっとも、ディープな猫の肉球好きの人(?)には、肉球のぷにゅっとした感触が再現できていないからダメ、と思われるのかもしれないけれども…。
[ 2013/06/25 22:19 ] | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

Excelの小技(7)バーコードを出力する(その3)

Excelの小技(6)バーコードを出力する(その2)」の続き。

「Microsoftバーコードコントロール」が出て来ない理由は、どうやら Access が入っていないためらしい。そう言えば、前にバーコードを作成したPCには、確かに使いもしない Access が入っていた。
とは言え、「Excelの小技」として書き始めた以上、「皆さんAcsessをインストールして試してください!」で済ませるわけにも行かない。

そこで、物は試し、Access Runtime をダウンロードしてみた。Access Runtime は、Access がインストールされていないPCでも、Access データベースを動作させることのできるアプリケーションで、Microsoft の公式サイトから無料でダウンロードができる。

ダウンロードしてみると、「コントロールの選択」に、「Microsoft バーコードコントロール 14.0」というものが現われた。以前僕が目にしたのは「9.0」くらいだった記憶があるから、ずいぶん進化したものである…と言っても、大したことをするわけではないので、違いはないだろう。

JANCODE

その「Microsoft バーコードコントロール 14.0」を選択すると、カーソルが範囲指定をする状態になるから、適当な大きさにドラッグする。

すると、バーコード状のものが出て来るので、その上で右クリック → 「プロパティ」をクリックする。

JANCODE

「LinkedCell」の右側の欄に、コードが入ったセル番号、ここでは「B2」を入れる。

JANCODE

「B2」セルに入っている数値のバーコードが、出力される。

JANCODE

バーコードリーダーで読めば、きちんとコードを認識してくれる…はず。手許にバーコードリーダーがないから、確認はしていないけれど…。

Excelの小技(6)バーコードを出力する(その2)

Excelの小技(5)バーコードを出力する(その1)」の続き。

まず、左上のOfficeマークをクリックして、出て来たプルダウンから「Excelのオプション(I)」を選択。

JANCODE

基本設定 → 「開発」タブをリボンに表示する にチェックを入れる

JANCODE

すると、こんな

JANCODE

だったところに、「開発」という文字が出て来る。
なお、この「開発」で選択できる機能は、以前ならツールバーに入っていたものも多いから、バーコード云々は別として、表示しておいた方が、何かと便利である。

JANCODE


それをクリックして、さらに、「挿入」→ 一番右下の「コントロールの選択」アイコンをクリック。
すると、「Microsoftバーコードコントロール」というのが出て来るはずなので、それを選択…

JANCODE

…あれっ、ない!

『スーパー・ジェネレイション』『アワー・コネクション』

あくまでも個人的な趣味趣向で、必聴の邦楽名盤10枚を取り上げる企画の番外編。

雪村いづみ『スーパー・ジェネレイション』

スーパー・ジェネレイション

  序曲(香港夜曲)
  昔のあなた
  ヘイ ヘイ ブギー
  バラのルムバ
  銀座カンカン娘

  東京ブギウギ
  胸の振子
  一杯のコーヒーから
  蘇州夜曲
  東京の屋根の下


この企画、元々は「必聴! 日本のロック名盤10選」にしようと思っていたのだが、そうなると、何がロックなのか、という問題が湧き上がるので、それも七面倒臭いと思って「日本の名盤」にしたのである。が、僕自身の趣旨としては「日本のロック」であるのには違いない。
それからすると、ずいぶん場違いな感のあるアルバムである。

服部良一の楽曲を、美空ひばり・江利チエミと共に「三人娘」と呼ばれた雪村いづみが歌う。「番外編」とはいえ、外れるにも程があると思われるかもしれないけれども、アルバム・ジャケットに書かれた文字が、ポイントである。
「Izumi Yukimura + Ryoichi Hattori + Caramel Mama」。
冒頭の「序曲(香港夜曲)」はヴォーカルなしで、いきなりキャラメル・ママ・ワールドが展開する。そこに雪村いづみのヴォーカルが激しく絡んで行く。例えとしては如何なものかという気はするけれども、初期のジェフ・ベック・グループのような緊張感がある。
少々毛色が違うので、本篇からは外したけれども、これも「名盤」と言って良い。


いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー『アワー・コネクション』

アワー・コネクション

  私自身
  ひとり旅
  六本木ララバイ
  ダンシング
  バレンタイン・デー
  黄昏どき

  真夜中のアマン
  哀愁の部屋
  ウィンター・コンサート
  そしてベルが鳴る
  ムーン・ライト
  バイ・バイ・ジェット


こちらはアーティスト名として明示されているとおり、ティン・パン・アレイとその周辺の人々の演奏。
『スーパー・ジェネレーション』に比べれば、ずいぶんバック・バンドに徹している感はあるけれども、それでも面子が面子である。石田あゆみのヴォーカルを、陰でしっかりと支えている。

ただ一つ言っておきたいことは、「ジャンルを超えて聴け」ということである。

母さん助けて詐欺

しばらく前にニュースになったことだが、口座に振り込ませるのではなく、現金を直接受け取るケースが増えて来て、「振り込め詐欺」というのが実態に合わなくなってきたために、新たな呼称を募集して、その採用されたものの一つが「母さん助けて詐欺」なのだという。
「振り込め詐欺」ほど語呂が良くないから、「E電」みたいなハメになるのではないかという懸念はあるのだが、それはどうでも良い。

僕の両親は既に80翁媼だが、その割にはまずまず元気で、2人で暮らしている。そこに先日、遠隔地に住む兄から珍しく電話があったという。
電話に出た父の話によれば、何でも、会社の書類と携帯電話の入ったカバンを置き忘れてしまい、警察に届けて親元の電話番号を教えて来たから連絡があるだろう、というのだそうだ。会社には内緒だから電話されると困る、携帯には勝手に電話を架けないように警察に言われている、この電話も友達の携帯を借りて架けている、と。また電話する、と言って終了。
むろん、この兄を名乗る人物は、兄ではない。恐らく電話のやり取りの様子から、容易に騙されそうにないと思って諦めたのだろう、その後、連絡は来なかったそうである。

父はかなりしっかりしているようで、教師一筋の人生で若干世間知らずのところがある…と言ったら怒られるだろうが、実際そうである…し、本人にしっかりしている自覚があるだけに何かあっても人に相談しそうにもないから、こういう詐欺行為に対しては簡単に引っ掛かる恐れがないではないと思っていたのだが、今回は無事、クリアした。
電話に出たのが母だったらどうなったかは判らないが、とはいえ父に相談もせずに大金を用立てるとは思えない(銀行に行くにも、父に車を出してもらうはず)から、父が達者なら、取り敢えずのところは安心のようである。

こんなことを暢気に書いていられるのは、騙されずに済んだからで、ひとまずのところは目出度し目出度しなのだが、今後何時何が起こるか判らない。油断も隙もあったもんじゃない。桑原々々。
[ 2013/06/21 22:58 ] | コメント(4) | TB(0) |  TOP△