『新明解国語辞典』のことなど

ここのところ辞典についてのエントリをいくつか書いている。

辞典について書かれたものとして外せないのが、赤瀬川源平の『新解さんの謎』である。前にもちらっと書いたが、その方向性をかならずしも諒とするものではないのだが、辞典の魅力をある方向から照らしているものであることは確かである。

その『新解さん…』には、『新明解国語辞典』の各版を見比べているところが少なからずあるが、すべてにおいて徹底しているわけではない。僕はどうしても、各版の違いに目が行ってしまうので、『新解さん…』に引用されている箇所を、自分の持っている初版及び第3版と比べてみて、気になったところを少々。

やはり気になる「おいしい、うまい、美味コーナー」より。

白桃

〔「黄桃」と違って〕実の肉が白い桃。果汁が多く、おいしい。

この「おいしい」は、少なくとも第3版まではない。第3版には、

〔黄桃に対して〕実の肉が白い桃。水蜜桃。

とある。
「おいしい」が加わっているのも惹かれるところであるのは間違いないのだが、僕にはむしろ、旧版にあった「水蜜桃」がどうなってしまったかの方が気になる。
そこで、「水蜜桃」を引くと、

水けが多くて甘味の強いモモ。実は先が平たくて、白いものが多い。

とある(初版)。
これを見ると、どうも、「白桃=水蜜桃」とは言えなそうだ。「白桃<水蜜桃」というような感じか。それで、「白桃」の項目から水蜜桃を削除したのだろうか。
なお、『日本国語大辞典』には、花の白い桃という意味も載っているが、用例が『日葡辞書』だから、現代語にはない用法なのかもしれない。

あこう鯛

〔赤魚の意〕タイに似た深海魚。顔はいかついが、うまい。

やはり、「うまい」であるが、もっと気になる問題がある。
第3版には、

〔赤魚の意〕タイに似た深海魚。顔は赤鬼のようだが、うまい。

とある。「赤鬼のようだ」を「いかつい」に直しているわけである。
赤鬼とは似ていないと思い直したのか、あるいは「赤鬼のよう」では説明になっていないと思ったのかは判らないが、「いかつい」なら説明になっているかは微妙なところである。
なお、第6版を立ち読みしたところ、「顔はいかついが、味はよい」に変わっていた。ほかに「うまい」が残っている箇所はあるのに、何故ここを「味はよい」に変えたのだろうか。

なお、『旺文社国語辞典』にはこうある。

フサカサゴ科の深海魚。たいに似て赤く、口が大きい。食用。

そう、この「食用」という端的な説明が、普通の辞書のあり方である…などと思いながら、『日本国語大辞典』の「あこう」(=あこうだい)の項を見たら、次のようにあった。

カサゴ科の深海魚。(中略)冬季に美味で、塩焼き、煮つけにする。

味や調理法に言及するのは、かならずしも『新明解国語辞典』の専売特許ではないらしい。

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