スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | | CM(-)TB(-) |  TOP△

附箋を剥がす(25)

叙述観点の転換の事例。

獅子文六『七時間半』(ちくま文庫)より。

その時、今出川有女子が、銀盆に氷塊入りのタンブラーと、ウイスキーを充たしたダブルのグラスをのせ、タンサンは手に持って、彼の側へやってきた。
「えらい、済まんなア……」
忽ち、彼は相好を崩して、盆を受けとると、ウイスキーを、タンブラーに注いだ。その間に、有女子は、タンサンの栓を抜いて、渡そうとするのを
「ちょっとお酌してや……」
と、図々しくも、タンブラーをさし出した。(P138)


「有女子は……」と始まった文が、「彼(=岸和田社長)」を主語とする「タンブラーをさし出した」に転換している。

やがて、有女子の体は、柩のように、列車ボーイが、二人がかりで、九号車の乗降口に、持ち運ばれるのを
「わ、わしに、任しとき……」
矢板喜一が、横から、出てきた。彼の両腕が、有女子の背と脚にかかると、羽根ブトンでも運ぶように、軽々と、歩き出した。その跡から、藤倉サヨ子が、慎ましい会葬者のように、首を垂れて、蹤いていった。(P350〜351)


「持ち運ばれる」のは「有女子の体」だけれども、それが、「矢板喜一が、横から、出てきた」という文になっている。

コメントの投稿











管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://hoshinahouse.blog101.fc2.com/tb.php/1065-cc239ef8










上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。