『新明解国語辞典』のことなど(続)

『新明解国語辞典』のことなど」の続き。

いしなぎ

スズキに似て大きい深海魚。幼魚はからだに茶色と水色の縦じまがある。夏季が最もうまい。

第3版も、若干の字句の相違はあるが、同様の内容である。
『新解さん…』では問題にされていないが、個人的に気になるのは、引用部分に続いて、「肝臓から肝油をとる」とあるところである。これが初版には、「肝臓には猛毒が有る」とある。果たして毒があるのか、ないのか…?

それにしても、イシナギなんていう魚、聞いたことがない。『旺文社国語辞典』には立項すらされていない。何とマニアックな魚を立項したものか、と思ったのだが…。
『日本国語大辞典』によれば、(「大きい」というから体長50~60cmくらいなのかと思ったらとんでもない)2mにもなるらしい。
そういう説明に続いて、

食用として夏が美味。肝臓にビタミンAを多量に含む魚として有名。

どうやら、有名な魚らしい。しかも、ここにも『新明解』ばりの「美味」などという説明もある。
さらに、《季・夏》とあるから、俳句にも読まれるような魚なのだろう。まるで知らなかった。そのうえ、「石投(いしなぎ)の味噌吸(みそず)」という慣用句もあるらしいから、もしかしたら知らない方が恥ずかしいのかもしれない。『旺文社国語辞典』には載っていなかったけど…。
それにしても、肝臓の猛毒はどうなったのか? と思ってウィキペディアを検索してみたら、「過剰なビタミンAにより中毒をおこすおそれがある」のだそうである。『日本国語大辞典』の説明では、食べるととても健康になりそうにも見えるが…。

鰧(おこぜ)

背びれに毒のとげが有る近海魚。ぶかっこうな頭をしているが、うまい。

初版では、

背びれに毒のとげが有る近海魚。頭はでこぼこしていて、ぶかっこうだが、うまい。

となっている。
個人的には、「ぶかっこうな頭」より、「頭はでこぼこしていて、ぶかっこう」の方が、姿を思い浮かべやすいような気がする。
とは言え、オコゼを知らなければ、どちらにしろイメージできまい。もっとも、国語辞典で魚の形をイメージできるような説明をするのは至難の技だから、『旺文社国語辞典』のように、

カジカ目オニオコゼ科およびハオコゼ科に属する近海魚の総称。一般には、おにおこぜをいう。灰色でうろこがなく、背びれに毒針がある。

という説明に止めるのが、無難だろう。
『日本国語大辞典』には、

カサゴ科に属するオコゼ類の総称。(中略)いずれも形が奇妙で背びれの棘に毒を持つ種類が多いが、俗には普通、食用とするオニオコゼをいう。

とあった。詳しい説明で、『新明解国語辞典』が食用にならないオコゼ類を除外しているのは判った。『新明解国語辞典』は、食べられないオコゼ類には興味がないのかもしれない。ただし、「形が奇妙」というのが、客観的な説明たりえているかどうか、疑問である。

さて、食べ物とは関係ないが、『新明解国語辞典』をめくっていて、恥ずかしながらこんな意味を初めて知った。

アルバイト

学問上の研究・業績。〔狭義では、博士論文をさす〕

『旺文社国語辞典』にも、「研究。論文」とあった。原語(ドイツ語)の意味(労働、仕事、研究)だが、小型の辞書にも載っているとはいえ、現代日本語では、そういう使い方は死語に近いだろう。
『日本国語大辞典』に引用されている例文。

それを正しく解読し真偽を判定したこと、そういう文献学者の仕事は単なる享受とは違うアルバイトであったと思う。(唐木順三「現代史への試み」)

この例文をいきなり見せられたら、何のことやらさっぱりわからなかったろう。いや、本当に恥ずかしい限りである。

もうひとつ。これは『新解さん…』で知った。

読書

〔研究調査や受験勉強の時などと違って〕想(ソウ)を思いきり浮世(フセイ)の外に馳(ハ)せ精神を未知の世界に遊ばせたり人生観を確固不動のものたらしめたりするために、時間の束縛を受けること無く本を読むこと。〔寝ころがって漫画本を見たり電車の中で週刊誌を読んだりすることは勝義の読書には含まれない〕

第3版までは、「寝ころがって」云々の文言こそ共通だが、「教養のために書物を読むこと」とあるだけである。ここまでストイックに読書を規定されると、自分が本当に読書と呼べる行為をしたことがあるのか、甚だ自信がなくなって来る。

12月2日追記
2項目目の標題「オコゼ」の漢字、半ば予想はしていたのだが、IEで見たら文字化けしていた。
少なくともOperaとFirefoxでは正常に表示されるようだが、ブラウザによっては見えないこともある。「にくづき」に「券」の「刀」を「魚」に…いや、是非辞典を引いていただきたい。

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