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「厳密には…」

あまり厳密ではない話。

本を読んでいて、おもしろいと思うこともあればそうとは感じないこともある。
もっとも、良いにしろ悪いにしろそれ以上の感想を持つことは稀なのだが、ごく最近読んで、久々に腹の立ったものがあったので、腹立ち紛れの勢いで書いている。
書評だのレビューだのというまとまったものではなく、あまりに低次元の断片語なので、著者名や書名は割愛することとする。

ある有名な作家の、ある有名な小説に関して、こんなことが書かれていた。

昼の空にある月というものを見たことがあるでしょうか。天候や月齢によっては見えにくい時もありますが、晴天であれば、満月以外なら見えるのです(厳密には、真昼時限定ならば四分の一以上が欠けている月のようです)。


何とも、意味不明な文である。
「見たことがあるでしょうか」と読者に問いかけているのを見ると、逆に、「見たことのない人がいるのでしょうか?」と聞き返したくもなるが、当該の小説にはそういう男が出て来るのだから、それは措いておく。
まずは、「天候や月齢によっては見えにくい時もありますが、晴天であれば、満月以外なら見えるのです」というのが、どういう知識に拠って書かれているのか、不思議でならない。
「満月以外なら見えるのです」と「厳密には、……」との整合性がどうなっているのか理解しがたいこと、「月齢によっては見えにくい」ということの指し示している意味が判らないことも措いておくとして、この文を読む限り、晴天であって満月でない日であれば、1/4以上欠けた月が、真昼時には必ず見える、ということになる。
そんなはずがないことは、小学生にでも判ることである。(もっとも、国文科の大学生でも判らなかったりはするのだが……。)

言うまでもないけれども、月は、同じ月齢であれば、ほぼ同じ時刻に昇り、ほぼ同じ時刻に沈む。むろん、季節による誤差があって、厳密に考える必要のある場合にはきちんと調べる必要があるけれども、数時間に及ぶ差が出るようなことはないから、大雑把に「ほぼ同じ」と考えておいて、大過ない。
月が「四分の一以上が欠け」るのは、単純に計算して、月齢20日頃~翌11日頃の間になるだろう。
その内、「真昼時」に月が見えるのは、月齢23日頃~翌7日頃の間(むろん新月は除く)で、その期間内に真昼時に四分の一以上欠けた月が見られるのは確かだけれども、それ以外の日には、月は見えない。「晴天であれば、満月以外なら見える」ことを前提にして「真昼時限定ならば四分の一以上が欠けている」ということが「厳密」だとは、到底思われない。
そんなことは、古典を少しでも齧っていれば調べなくても判ることだけれども、判らないのなら当然調べてから書くべきだろう。

ここまでは、謂わば揚げ足取りみたようなものだけれども、もう少し大事なことが、ある。
続きは、また書く。

【10月19日】
記述が不明確なところを、若干修正した。

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