続・昼下がりの月

もう一回だけ書いて、これで終いにする。

厳密には……」の続き、その3。

数寄屋橋のそばにあるデパートを出たところで秀一は煙草を買い、英子は、
「あ、月が出ている」
と空を見上げた。


英子にこれまで書いてきたような月に対する正確な知識があったわけではないだろう。が、昼の月が毎日見えるものではない、ということを感覚として持っているから、昼の月を見て、「あ、月が出ている」と言うのである。毎日見えるものなら、そんなことを言うはずがない。

空を見上げて、昼の月が出ていたら戻ろうと思い、見上げようとして、もし出ていなかったらと不安になって、汗ばむのかまわず歩き続けた。


作品の最後で、英子に空を見る決心がつかないのは、空を見上げても月が見えるとは限らないからである。
「昼の月が出ていたら」というのは戻るための踏ん切りである。踏ん切るためには月が出ていなければならない。が、月が見える確率は、さほど高くはない。
それがわからないでこの小説を読んでも、正しい解釈に至ることは覚束ない。

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