『聖徳太子』

この前に読んでいた本を、職場から帰宅する電車の中で読み了ってしまったので、何かないかと我が家の書架を探してみたところ、買ったまま読まずにあった本書を見つけた。

吉村武彦『聖徳太子』
聖徳太子 (岩波新書)

歴史上の厩戸王子の事跡を克明に調べ上げて行くところは、僕のような門外漢には論評のしようがないのだが、第IV章「聖徳太子像の形成」は興味深かった。
面白いのは、歴史上の厩戸王子と伝承の聖徳太子を明確に切り分けているところである。
書紀では(大化改新で打倒された氏族であるのにも関わらず)蘇我氏が仏教興隆の功労者とされていたのに対して、霊異記-三宝絵-法華験記という仏教説話の中で、聖徳太子が日本仏教の開祖となって行く様相が、明らかにされている。
東大の国史には、ガチガチの史料偏重主義ではなく、文学的著作も、その可能性と限界を踏まえたうえで正当に評価する伝統があるように見受けられる。著者も、そういう流れの中にいるのだろう。

本旨とはあまり関係ないところで、ちょっと嬉しかったのは、僕の世代では旧1万円札のデザインとしてお馴染の人物が、聖徳太子その人だということ。
聖徳太子だけでなく、僕が子供の頃に教科書に載っていた源頼朝や足利尊氏の肖像画も、実は別人のそれだと言われるようになって久しい。
学問が進歩するのは望ましいことなのだが、子供の頃からそう信じていたことが実は違っていた、というのはほんの少しばかりはがっかりするものである。
頼朝と尊氏は、どうやら別人説の信憑性が高そうだが、本書によれば、件の肖像の元になった「聖徳太子三尊像(唐本御影)」は聖徳太子をモデルとして描かれたものと考えて良さそうである。むろん、太子没後の作で、本人に似ているかどうかは定かではないが。

本書の発行は2002年。買ったのは発売直後だろうから、書架で9年間も眠っていたわけである。
[ 2011/06/13 21:10 ] 本と言葉 歴史の本 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

コメントの投稿











管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://hoshinahouse.blog101.fc2.com/tb.php/262-73b1164e