「つまらない」

「とんでもない」ということばを丁寧に言うとどうなるか?
これは、「正しい日本語」本の常連、間違いやすい日本語の例の中でも、特に有名なものである。

日本語の「ない」には3通りあって、それぞれ、丁寧な言い方の作り方が違う。

(1)助動詞「ない」→「ません」
  「欲しがらない」→「欲しがりません
(2)形容詞「ない」→「ございません」「ありません」
  「傘がない」→「傘がございません」「傘がありません
(3)形容詞活用語尾「ない」→「+ことでございます」「+ことです」
  「かたじけない」→「かたじけないことでございます」「かたじけないことです

(1)と(2)は、特に難しいことはないだろう。注意を要するのは、(3)である。
例に上げた「かたじけない」で言えば、(1)の方式で「かたじけません」とするのは論外として、語尾だけを(2)の方式で丁寧にして、「かたじけございません(ありません)」と言うのも間違いだ、ということである。
もっとも、本来は、「かたじけない」に「ございます」を直接くっ付けて、「かたじけなくございます」→「かたじけのうございます」と言うべきではないかと思うのだが、長いものには捲かれろ、そこは突き詰めないでおく。(何が長いのかは良く判らないが…。)

「とんでもない」も、同じくそれで一語の形容詞だから、「とんでもございません(ありません)」というのは間違いで、「とんでもないことでございます(ことです)」が『正解』だということになっている。

さて、それでは、標題に掲げた「つまらない」を丁寧に言うとどうなるか?
この語は、元々の語構成としては「詰まる」に助動詞「ない」が接続したものではある。
が、「詰まる」という概念を否定しているわけではなく、あくまでも「つまらない」という概念を表わしているわけだから、一語の形容詞と見なすべきものである。
そこで、上の方式(3)に当てはめてみれば、正しい「つまらない」の丁寧な言い方を作ることができる。

では、答えを、文豪・獅子文六先生にお伺いしてみよう。

「でも、亭主の留守も、気楽で、いゝもんぢやないの。ちつとは、好き勝手な真似を、やつたらいゝのに……」
「やつてみましたわ……」
「どうだつたい?」
つまりませんでした……」
駒子は、クリクリした眼を挙げて、素直に、答へた。(『自由学校』)


…ん?

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