「すごい」ニュース

今朝、NHK FMを聞いていて耳にしたニュース。

レディー・ガガさんら 被災地支援

東日本大震災の被災地を支援しようと、世界的な人気歌手のレディー・ガガさんをはじめ国内外のアーティストが参加した大規模な音楽イベントが、25日、千葉市の幕張メッセで開かれました。

このイベントは、世界各国で音楽専門チャンネルを展開する会社が、東日本大震災の被災地を支援をしようと開きました。イベント開始とともにレディー・ガガさんが巨大なくもの巣を背にステージに登場すると、会場を埋め尽くしたおよそ6000人のファンから大きな歓声が上がり、一斉に総立ちとなりました。このイベントに出演するために来日したというガガさんは、どんな困難な状況からも必ず立ち直れるというメッセージを込めて、歌いながらくもの巣から逃れるパフォーマンスを披露しました。イベントには、このほか日本の人気グループ「EXILE」や韓国の人気アイドルグループ「少女時代」など、およそ20組が参加しました。このイベントで集めた義援金は、日本赤十字社を通じて被災地に寄付されるということです。ガガさんのファンという20代の女子大学生は「世界中が日本を応援してくれているような気がします。音楽が持つ力はすごいので被災地までその力が届けばいいと思います」と話していました。


気になったのは、「20代の女子大学生」の、「音楽が持つ力はすごい」ということば。
むろん、一女子大学生の感想としては、そんなものだろう。
当日、日本のために駆け付けてくれた、大好きなガガのステージを見ることができた彼女としては、感激のあまり「すごい」と総括する以外のことばが見つからなかったとしても無理はない。どんなことばを並べてみたところで、すべて「帯に短し」で、自分の気持ちを余すところなく表現するに適切なことばとしては、「すごい」しか存在しなかったのだろう。
仮に僕がその場にいたとして、どれだけの語彙を駆使して語ることができたかと言えば、甚だ心許ないから、件の女子大学生をくさすつもりは別段ない。

NHKの記者も、当日その場にいたから、女子大学生のコメントに大いに共感ができたのだろう。それだけ音楽の力が「すごい」ことを実感させるステージが展開されたのであろうことは、想像するに難くない。それを過不足なく表現したのが、女子大学生のコメントだったわけである。
だから、記者個人にとっても、「すごい」は最適なことばだったのだろうと推測する。

そこまでは、良い。

が、報道というのは、当日その場にいなかった大衆に向けて、その場の様子を発信するものである。女子大学生の「すごい」という感想に共感して、それをそのまま「すごい」だけで発信したNHKには、この「すごい」を、視聴者がどのように受信するかという視点が欠けている。

ことばというものは、それを使う「場」と密接な関係がある。家族に対しては通じることでも、近所の人には通じないことがある。近所の人には通じることでも、離れた地域の人には通じないことがある。日本人には通じることでも、外国人には通じないことがある。…。
だから、同じ事柄を語るのでも、どういう場で、誰に対して話すのかによって、表現が変わるべきものなのである。

イベントの当日、会場で語ることばとして仮に適切だったとしても、その翌日、ニュースとして発信する時に、そのことばが適切であるかどうかは、改めて検証する必要のあることである。
なお、「すごい」は引用部分だから、この記事の発信者とは関係ない、ということにはならない。女子大学生の「すごい」以上のことばを持ち合わせなかったから、それをそのまま引用したというだけのことである。

どんなことでも「すごい」で済ませてしまうのは語彙の貧困だという考えがある。それが間違いだとは思わないが、それよりもむしろ、同じことばなら、いかなる場で使おうと違いはないと考えて疑わないことの方が、より深刻なことばの貧困なのではないか、と思うのである。

ことばおじさんなら、どう思うだろうか?

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