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『暗夜行路』より

『暗夜行路』繋がり。

だいぶ前に「全然」の例として引用したことのある一節。

然し今になれば彼は彼女を全然圏外に置いて余りに楽観していた自分の呑気さが悔いられた。(前篇・第一・5)


「この文の構文を説明せよ」という課題を出されたら、どのように答えるべきか。

「然し今になれば彼は」の「彼は」が主題になっているのは間違いない。そこで、これを受ける述部を探すと、文末に、「悔いられた」とある。
「彼は>悔いられた」ということで、何が悔いられるのかというと、「彼女を全然圏外に置いて余りに楽観していた自分の呑気さ」である。

つまり、こういう構文である。

(然し今になれば)彼は>(彼女を全然圏外に置いて余りに楽観していた自分の呑気さが)悔いられた


こういう理解の仕方は、論理明晰で筋が通っている。積極的な誤りを含んでいないのではあるが、俯瞰的に見過ぎている嫌いがある。

この文を前から順番に読んで行けば、…そして、文章を読む時には、前から順番に読む以外の方法はありえないのだが…ここは、第一に、

(然し今になれば)彼は>彼女を全然圏外に置いて>(余りに)楽観していた


という文脈である。「楽観していた」は、「彼は」を主題とする述部ということになる。
が、それと同時に、「楽観していた」は「自分の呑気さが」以下に連続する。

(余りに)楽観していた自分の呑気さが[彼ニハ]悔いられた


むろん、「悔いられた」のは「自分の呑気さ」であり、その呑気さの内容が「彼女を全然圏外に置いて余りに楽観していた」のであるのには違いない。
そして、「楽観していた」のが「彼」以外ではありえない以上、「彼は>悔いられた」と、形式的には考えられるのだけれども、文章の流れとしては、「彼は」と「悔いられた」とが、単純な主述関係として直結しているのではない。

(然し今になれば)彼は>彼女を全然圏外に置いて>(余りに)楽観していた(楽観していた)自分の呑気さが[彼ニハ]悔いられた


というふうに、推移する文脈である。

2文として表現すれば、論理は明晰になる。が、反面、文学的な文章では和文脈の情調を損なう可能性がある。この『暗夜行路』の文は、2文として表現しうる内容を、1文に凝縮して表現しているのである。

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