「第4勢力」

予備校時代、「この○○予備校の東大合格者数は、麻布・開成に次ぎ第3位」ということを言っている講師がいたのだが、もちろん言う方も冗談、聞く方も冗談と判っていた。高校と予備校を一律に並べるのがおかしい上に、「○○予備校」の東大合格者数には、麻布・開成出身者が多く含まれているのが明らかだからである。

さて、何故、そんな昔話を書いたかというと、今日、こんな記事を目にしたからである。

政界の頂点に立った「松下政経塾政権」 前原氏もパシリ扱い(MSN産経ニュース)
「政経塾政権」-。2日に発足した野田佳彦政権はこう評される。「次世代リーダーを養成したい」との理念を掲げ、故松下幸之助氏が設立した松下政経塾。野田首相は同塾出身者として初めて、政界の頂点に立った。政経塾出身の国会議員は1期生の野田首相含め38人。今や公明党(40人)に次ぐ「第4勢力」として、名実ともに政界の中核となりつつある。


この記事は、朝刊の第1面に掲載されていたものだから、読者を笑わせようための冗談とは思えない。だが、これが冗談でないとしたら、天下の報道機関が、大真面目にこんなことを書いていることになるわけで、何だか情けなくなる。

言わずもがなだが、民主党の議員数+自民党の議員数+公明党の議員数+松下政経塾出身の議員数+…無所属の議員数、と加算して行くと、議員総数より松下分だけ多くなる。政党と、そうでないものとを一絡げにして順位づけすることは、当然のことながらまったく合理性がない。

松下政経塾出身議員の数を、各政党の議席数と比較してみること自体は無意味とは言えないが、それなら単に「公明党の議席数に匹敵する」と言えば良いのである。それを、それではインパクトに欠けると考えて、「第4勢力」という順位づけをしたのだろう。悪く言えば、大勢力であることを印象づけるための、数字上のゴマカシである。

イデオロギーの存在しない報道というのはありえないから、同じ事実に対して、各報道機関がマチマチなことを言うのは、別段おかしなことではない。
たとえば、良くある「内閣支持率」。
支持が40%、不支持が30%、残り30%が「その他・答えない」という結果だったとする。
一般には、「支持が不支持を10ポイント上回っている」という理由で、その内閣は支持されている、と判断するだろう。これを「不支持と答えた人は30%だけだった」という言い方に変えれば、さらに高く支持されているように見える。内閣を応援しようとする立場に立てば、そういう言い方を取ることになるだろう。
反対に、内閣に批判的な世論を醸成しようとすれば、「支持すると答えなかった人が60%に達した」という言い方もできて、こうなると、国民の支持を得られていないようにも感じられる。
これは極端な例だけれども、けっして根拠となる数字を誤魔化しているわけではなく、正しい数字を元に、まったく違うことを述べているだけである。

世論調査などで、特定の主義主張に誘導するような質問が設定されていることはある。が、それはそれで、導き出された数字自体がウソだということにはならない。
だが、元になる数字自体を、自分の主張に都合の良いように作り替えることは、(報道に限ったことではないけれども、)やってはいけないことである。この「第4勢力」というのは、事実でないことを、あたかも数字上の根拠のある事実であるかのように見せかけているのである。

もっとも、今回の場合は、大抵の人がおかしいと感じられるレベルのものだから、それほど罪はないかもしれないけれども…。
[ 2011/09/04 22:15 ] 理屈・屁理屈 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

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