「どきつく」

以前、『暗夜行路』で見つけてから、ちょっと気になっていたことば。

一々こんな事で裏切られていては仕方がないと自分で自分を食い止めたが、その内女の人は、ふと彼から見られている事を感じたらしく、そして急に表情を変え、赤い美しい顔をして隠れるように急いで内へ入って了った。彼の胸も一緒にどきついた。(後篇・第三・2)


『日本国語大辞典』によれば、「どきつく」は「不安で胸が動揺する。胸がどきどきする、むなさわぎする」意で、用例として浄瑠璃や浮世草子が引かれている。
むろんわざわざ辞書を引かなくても、「どきどき」乃至「ときとき」という副詞と関係がありそうだから、意味はおおよそ見当が付く。
なお、「どきどき」は、今でも「ドキドキしちゃう!」というふうに使って何の違和感もない、現代人にとっても実感の籠った印象のあることばだから、割に新しいことばなのかと思うと、そうでもない。前出『日国』には、やはり浄瑠璃の用例が引かれている。

例の如く、何の省察もないメモみたようなものなのだが、先日「いちご姫」を読んでいて、「どきつく」が出て来たので、思い出して書き留めた。

「いかで妾が太刀を……」こればかりは流石のいちごの胸もどきつく。(「いちご姫」第12)


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