「しかんで」

例によって例の如く、ただの備忘のための気になったことばのメモ。

幸田文「勲章」(昭和24年)より。

すこし待っていろ、すぐ済むから、と云う父にそむいて、私は暇を云った。父は魚を私にと云いつけた。貰って帰ったのはさっき一ト折だけしまわずにあったそれだった。ひらめの皮がしかんでいた。


終止形は「しかむ」のはずだが、小さな辞書を見てみても、出ていない。
そこで、『日本国語大辞典』を見ると、「顰・蹙」の字を宛てて、「顔や額にしわが寄る。しぶい顔つきになる。しわむ」とあった。「しかめる」(文語動詞は「しかむ」)という他動詞と関係のある自動詞だが、他動詞「しかむ」が下二段活用なのに対して、こちらは四段活用。

ただし、今上げた例は、「ひらめの皮」について言っているもので、顔についてではない。
『日国』の用例には『日葡辞書』が採られていて、それには「また比喩的に、衣類、紙などがしわになったり、折れまがったりする」とあるそうである。無論、実際にはポルトガル語で書かれているわけであるが。

そんなことばが、戦後まで使われていたわけである。

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