「全然」(その6の上)

これまで何度か、「全然」についてのエントリを書いて来た。その続きで、相も変わらず結論はない。

『日本国語大辞典』の「全然」の項。
形容動詞の「全然たり」は省いて、副詞「全然」の説明を上げる。

(1)残るところなく。すべてにわたって。ことごとく。すっかり。全部。
(2)(下に打消を伴って)ちっとも。少しも。
(3)(口頭語で肯定表現を強める)非常に。「ぜんぜんすてき」「ぜんぜんいかす」

(1)と(2)には坪内逍遥・国木田独歩・夏目漱石等の用例が上げられているが、(3)は口頭語だけに、実際に使われている用例は上げられていない。

この『日国』の説明で注目すべきは、現代の否定と呼応しない「全然」は、明治以来の否定と呼応しない「全然」とは別の用法だと理解している点だろう。つまり、(1)と(3)は、形は似ているけれども、同じものではないということである。

(1)は、「すべて」「残らず」というような意味で、(2)はその否定形だが、(3)は単に強調を表わしているだけである。
例えば、芥川龍之介の『羅生門』(1915年)の、「この老婆の生死が、全然、自分の意志に支配されているということを意識した」の「全然」は、「完全に」というような意味合いである。
それに対して、現代語の「ぜんぜんすてき」は、「完璧にすてき」なのではなくて、「とてもすてき」という程度のことである。
だから、(1)と(3)は、全然違うというわけである。

続く

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