『恐竜時代 I 』

小林快次『恐竜時代 I ―起源から巨大化へ』

恐竜時代I――起源から巨大化へ (岩波ジュニア新書)

恐竜が絶滅してから6550万年も経つ現在、恐竜研究は日進月歩、新しい研究だったものが、次々と塗り替えられている状況であるらしい。
恐竜は爬虫類で冷血動物で、巨大化し過ぎて動きが鈍く、より優れた生物である哺乳類に取って変わられることになった…というような常識も今は昔、恐竜が極めて優れた生物だったことが、明らかにされつつある。
皮膚の色は判らない、と言われていたのが、科学的に立証できるようになって来ているし、羽毛の生えた恐竜がいたことも判っている。

そんな恐竜研究の最先端の成果が、中高生にも判るように易しく書かれている(ジュニア新書だから)…ことを期待して本書を手に取ったのだが、読み始めると少々出端を挫かれた。
最先端には違いないが、最先端の発見をした時の発掘現場の体験記といった様相でスタートする。
そういう意味では、期待外れと言えないこともないのだが、この発掘体験記が臨場感溢れていて実に面白い。読んでいて、今すぐにでもアラスカに飛んで発掘をしたいような気分にもなって来る。

もちろんのこと、読み進めて行けば、最新の恐竜研究の成果も書かれている。
三畳紀後期に恐竜が誕生してから、全大陸を制覇したジュラ紀前期。小型獣脚類が栄えていたジュラ紀中期、原始的なティラノサウルス類のプロケラトサウルスは2mほどの大きさだったという。ジュラ紀後期にはどんどん大型化し、竜脚類のアルゼンチノサウルスは全長35mで体重73トン。アフリカゾウが7mで8トンということを考えると、いかに巨大だったかがわかる。そして鳥類の出現へ…。鳥類の起源がいつか、始祖鳥は鳥なのか恐竜なのか、現在でも活発な研究が続けられているらしい。
…というところまでが、本「I」の内容。

僕が子供の頃には聞いたことのなかった恐竜が数多く登場する。最近子供と一緒に仕入れた知識で何とかカバーできていたこともあるにはあるのだけれども、研究の進歩の具合が実感できるのには違いない。本書には、2011年に発表された研究の成果まで、取り入れられている。

むろん僕は恐竜研究についてはずぶの素人だから、本書に書かれていることが現在の研究の中でどのように位置づけられるべきものなのかは判らない。
が、この本に書かれていることは、信用して良いのではないかと思う。

いいわけをするつもりはないが、研究とはこういうもので、その当時での最善をつくした結果を報告しているので、その後結果が変わることはままある。つまり、研究者でもまちがえることはしょっちゅうあるということだ。ただ、それは「まちがい」ではなく、「研究の進歩」と解釈してもらいたい。(「全大陸制覇へ」)


こういうことを正直に言える人の書いたものに、少なくとも嘘はないと思う。
研究者たる者、何も知らない若者ごとき、うまく誤魔化して自己正当化することはいくらでもできるはずである。昔の研究は間違いだ、俺の言うことを信じなさい! という具合にである。
それを、研究とはどういうものか、という観点から説明しているのは、非常に良心的である。
言い換えれば、この本に書かれていることも、いつか覆される時が来るかもしれないということで、逆に、相当の自信がなければ、そういうことを明言することはできない。

もう1例。

鳥類が、中生代の恐竜から進化したということは、現在ではひろく受け入れられている。もちろん、いくら受け入れられていても「仮説」であることにはちがいないが、化石記録を用いた古生物学や、発生学と言った生物学的な知見からも、鳥類が恐竜であるということが受け入れられている。
しかし、研究者の中には、この「仮説」を受け入れない人もいる。恐竜の研究も科学なので、それは自由である。(「小型獣脚類さかえる」)


読み終える間際になって奥付を見たら、著者は1971年生まれ。若い研究者である。道理で、文章にも勢いがある。

「II」が待ち遠しい限り。
[ 2012/09/12 09:20 ] 本と言葉 子供の本 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

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