『怪人二十面相』

江戸川乱歩『怪人二十面相』

怪人二十面相 (少年探偵)

言わずと知れた、「少年探偵」シリーズの第1冊。「ぼ・ぼ・ぼくらは少年探偵団」でお馴染み(?)の少年探偵団は、この作品の中で結成される。
事情があって(もとより大した事情ではないが)、シリーズ2冊目の『少年探偵団』を先に読んだのだが、順番を守らなかったからと言って、その面白さが減殺されるものではまったくない。

主な読者層と年齢が重なる、名探偵明智小五郎の助手・小林少年が活躍するところも、読者が作品に嵌まり込む要因になっているだろう。事件が小林少年の手に負えない事態に展開した時に、満を持して明智探偵が登場するのも心憎い。
あるいは、小説というより、当時の「現代版・子供向け講談読み物」といったようなものと考えた方が良いのかもしれないが、一読すれば、人気を博した理由は良く判る。

現代の推理小説ファンから見たら、高度な推理とは到底言えないだろうし、二十面相の変装がいかに巧みだとしても、家族にも見破れないというのは、現実性に乏しいとも言える。もし粗筋だけを読んだとしたら、随分荒唐無稽な感じがするだろう。
が、作品を実際に読んでいると、そんなことを感じさせないのは、文章と構成の巧みさである。テンポ良く話が進んで行くし、何より、山場が盛りだくさんで、読者を飽きさせない。

大人になると、こういうものに対して、所詮は子供向けだとか、70年以上前の遺物だとか、否定的なことを言ってみたくなるものである。だが、純粋に作品そのものを楽しむ心を以ってすれば、この上もなく面白い物語である。
ところで、本書の解説には、かなり気になる点がある。

『怪人二十面相』は、一言でいうと、二十面相と明智小五郎の対決の物語です。東京駅でのプラットホームでの対決をはじめ、おもな対決のシーンは五回あります。みなさんは、どのシーンにいちばんスリルを感じましたか。わたしは、明智に追いつめられた二十面相が気球にのって空へにげるシーンがいちばん気に入っています。


僕の読む限り、直接対決は2回しかないから、「五回」というのがどの部分を指すのか、少々微妙な感じがするが、明智の登場しない山場が、プラットホーム(とそれに続く鉄道ホテル)のシーン以前に3回あるから、それを合わせてカウントしているのかもしれない。
それは良いのだが、「いちばん気に入ってい」るという「気球にのって空へにげるシーン」が、本作を隅から隅まで読み返して見ても、まったく出て来ないのである。
これは、まず間違いなく、『少年探偵団』の中のシーンとの勘違いである。
2005年の初版から版を重ねて我が家のものは2010年の第26刷。今まで訂正されていないところをみると、解説なんて、ほとんど読まれていないのかもしれない。もっとも、読まれていたとしても、わざわざ版元に投書するような人も少なかろう。むろん僕もしない。それに、作品そのものが面白ければ、解説など、さして読む意味もない。
ただ、この解説、上記の点を除けばなかなか良いことが書かれているだけに、惜しいところではある。
[ 2012/10/23 22:01 ] 本と言葉 子供の本 | コメント(2) | TB(0) |  TOP△

私もご指摘の解説部分が気になり、検索して本ブログに達しました。
おかげさまですっきりしました。ありがとうございます。
[ 2017/04/15 22:05 ] [ 編集 ]

コメントありがとうございます。
解説なんて、どうでも良いといえば良いんですが、真面目な子供は隅から隅まで読んだりするので、このくらいのことは編集者が気づいて欲しいとも思いますね。
[ 2017/04/15 22:50 ] [ 編集 ]

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