ピントのヒント

富岡八幡宮の狛犬の横顔の写真を見たある方から、「良くピントが合いますね」という感想を頂戴した。
よくよく見れば、それほど合っていないものもあるし、過去のそれ以外のエントリにある写真も合わせれば、一見して外れている写真も少なからず曝している。
だから、マグレ当たりのようなものを玄人でもないただ1人から褒められたからといって、まったく誇ることではないのだが、物はついで、この機会に「ピント」について書くことにする。
書く内容は、タイトルのダジャレのレヴェルから推して知るべし。ただし、優れた政治評論家が政治家になったからといって必ずしも良い政治ができるわけではないことを裏返して考えれば、僕程度の写真の腕前の者が書いたものが、誰かの役に立つことがないとも限らなかろう。
なお、この「優れた政治評論家が…」云々は一般論で、別に特定の誰かを指しているわけではない。邪推なきよう…。

さて、一昔前なら、記念撮影でVサインをしたところ、前に突き出した手にピントが合ってしまって顔はボケていた、とか、二人並んで撮ったら、二人には合わずにその向うの背景にピントが合ってしまった、という経験を持っている方もいるだろう。
今では人の顔を認識する機能を持ったカメラが当たり前になり(ペットの顔を認識するカメラすら珍しくない)、そういう典型的なピンボケが極度に減ったから、写真を撮る時に、あまりピントを気にする必要もなくなった。
が、狛犬の写真を、特にアップで撮る場合には、「狛犬認識」なんていう機能を持ったカメラはまだ開発されていないから、未だにピントを合わせるのが難しい。さらに、石が摩耗していると、目を凝らして見ても、合っているのかいないのか、さっぱり判らないこともある。
それで、シャッターボタンを押せばたちどころに音もなくピントが合う時代に、敢えてピントについて書いて見ようと思ったのである。

1)大抵の写真はピントが合っていない。
語弊のある言い方だが、厳密に言えばピントというのはそうそう合うものではない。
何故なら、ピントは撮像面(CMOSやCCDなど。最近では稀だがフィルム面も)と平行な平面上にしか合わないものだからである。
もし撮像面から50cmの距離にピントが合っているなら、厳密に言えば50.1cmのところにはピントは合っていない。
ただし、人間の眼はそこまで精密なものではないから、「被写界深度」(=ピントが合っているように見える範囲)というものがあって、被写体がその範囲内に入っていれば、それは「ピントが合っている」ということになる。
被写界深度の深浅にはいくつかの条件があるのだが、簡単に言うと、望遠は広角より浅く、遠距離は近距離より深い。だから、風景写真(広角かつ遠距離)ではあまりピンボケは起こらないが、接写(多く望遠かつ近距離)ではピントを合わせるのが難しい。
また、絞りを開ければ浅くなり、絞れば深くなる。
この「絞り」というのはカメラに詳しくない人には判りにくい概念だが、近視の人なら、ハッキリ見えないものが、眼を細めたら見えるようになることを、知っているだろう。これは、絞りを絞るのと同じ効果があるからである。

上に書いたことは、どちらかというと薀蓄に近いことで、良く判らなくてもそれほど差し支えのあることではないので、とりあえず、アップで撮れば撮るほど被写界深度は浅くなり、ピント合わせは難しくなる、という程度に思っていれば良いだろう。

2)大抵の写真はピントが合っている。
1)と矛盾するようだが、実はピントが合っていない写真というのは、ある意味において滅多にない。
大抵は、画面のどこかにピントが合っているものである。問題は、どこにピントが合っているのか、ということである。

それでは、次の4枚の写真を、見比べていただくことにしよう。
モデルは、我が家のトンデモネズミ君。
このトンデモネズミ君、昔々、本郷かどこかの雑貨屋で買ったもの。本当は言うまでもなくウサギなのだが、トンデモネズミにどことなく風貌が似ているので、我が家ではそう呼んでいる。

(1枚目)
manxmouse
(2枚目)
manxmouse
(3枚目)
manxmouse
(4枚目)
manxmouse

ピントが合っている写真は、4枚の内のどれだろうか?(どれも合っていない、という意見は、この際受け付けないことにする。)

答えは、どの写真もピントは合っている、である。
1枚目は鼻に、2枚目は目に合っている。3枚目はちょっと外してしまった感じを受けるが、実は左耳の内側に合っている。4枚目はまったくのピンボケに見えるが、後ろの床には合っている。
どれも画面内のどこかにはピントが合っているのに、その位置によって、これだけ違うのである。

もちろん、トンデモネズミ君を撮影しているわけだから、4枚目は論外である。画面内にピントの合った箇所があったとしても、一般的にはこれをピンボケと呼ぶ。3枚目も顔がぼんやりとしか見えないから対象外として、成功と言えるのは、1枚目か2枚目のどちらかだろう。

では、どちらの写真がより良いか。
トンデモネズミ君は鼻もとてもチャーミングだから、1枚目にもそれなりの味はあろうけれども、2枚目の方が、円らな瞳で見詰められている感じがするのではないだろうか。
先に書いた被写界深度の関係で、2枚目の写真も、鼻を見ればピントは合っていない。けれども、こういう写真を見る時、どうしても目に視線が行くものである。耳も大きくボケているが、目に見入っているから、それほど気にならないはずである。
つまり、こういうアップの写真を撮る時には、ピントは目に合わせるのが妥当な選択なのである。

この「ピントは目に合わせる」は、トンデモネズミ君の撮影に限って有効だというわけではなく、狛犬撮影にも応用できる。
狛犬の場合、ここまで寄って撮ることは滅多にないから、被写界深度はもう少し深くなる。とは言え、狛犬は顔の凹凸が大きいから、ある程度寄って撮ろうとすると、被写界深度から外れる部分が多くなる。そこがなかなか難しい。
冒頭に書いた富岡八幡宮の狛犬の横顔の写真は、何とか一生懸命、目にピントを合わせることを心して撮ったもので、それがやや成功した、(僕にしては)上出来な事例である。

ただし、トンデモネズミ君の鼻にこの上なく惹きつけられる人もいるだろうから、どこにピントを合わせるのが正しいかは、かならずしも杓子定規に決められるものでもない。
(OLYMPUS PEN E-PL2 + YASHICA ML MACRO100mm F3.5)
[ 2012/10/29 19:52 ] | コメント(2) | TB(0) |  TOP△

いやあ、勉強になりました。
これまであんまりピントなんてことを気にしないでやってきましたが、狛犬さん一つを上手に撮るには結構手間がいるってことに気づきました。

・・・ところで、先日お話したちょいと珍しい狛犬さん。昨日撮ってきました。
ピントが合っているかどうか・・・・

まあそんなことは恐れず、そのうちにブログで公開するつもりです・・・
[ 2012/10/29 22:47 ] [ 編集 ]

Re: 三友亭主人 さん

言うは易しで、これが実践されているかというと…。
カメラに「狛犬モード」なんて機能があればいいんですけどねぇ。
[ 2012/10/30 16:00 ] [ 編集 ]

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