『日本の暦と和算』

中村士監修『図説 江戸の暮らしを支えた先人の知恵! 日本の暦と和算』

図説 江戸の暮らしを支えた先人の知恵! 日本の暦と和算 (青春新書INTELLIGENCE)

青春出版社に対しては、ベストセラーズなどと同類の、何だかイイカゲンな本を出しているイメージしか持っていなかった。『でる単』のような超ロングセラー、受験生のバイブルもあるわけだから、あくまでも僕の持っていたイメージだけの話だが…。
この本も、妙に長い角書きがあったり、「著」ではなくて「監修」だったりするところも、若干怪しげな雰囲気を感じないではなかったものの、ごく一部だけでも役に立てば良かろうと思って買うことにした。

第1章「旧暦と日本人」が主な目当てだったのだが、読んでみると、軽く読み流そうと思っていた第2章「江戸の改暦と天文方」が非常に面白かった。
暦と言うと、いかにも古めかしい、国文や国史に興味のある人にしか関係のないもののように思われがちだが、本書を読むと、実はそれぞれの時代の最先端の自然科学だったということが判る。監修者が天文学者であることも、そういう記述になっている一因ではあるのだろう。
中国から伝わって、貞観3年(861)以来使われ続けてきた宣明暦が、貞享2年(1685)に渋川春海による貞享暦に変わる経緯には、小説のような面白さがある。さらに、この貞享の改暦に保科正之が大きく関与していたことも、僕HOSHINAとしては、興味を引かれるところである。

ところで、本書の中に「平安時代末期には仮名で書かれた暦が普及し、暦は宮中の女性や商人などの間にも広まったとみられる」(序章「暦とは何か」)という記載がある。
きちんと調べたわけではないが、仮名で書かれた暦は、『宇治拾遺物語』巻5「仮名暦あつらへたる事」が文献初出例ではないかと思われる。この宇治拾遺の逸話自体は本書でも触れられているけれども、僕の読み落としでなければ、本書で取り上げられている種々の暦の中に、「仮名で書かれた暦」についてこれ以上詳しく言及されたところはない。
誰が作って、どのように広まったのか、そもそもそれは本当のことなのか、「みられる」ことの根拠を、知りたいところである。

そのほか、「こらむ」を含め、若干怪しげ、と言っては失礼かもしれないが、根拠の明確でない記述が見受けられる箇所もあるものの、どんな本でもまるまる鵜呑みにすべきでないのは当然のこと、当否は可能な限り自分で判断すべきものだから、それがクリティカルな欠陥だとは言えないだろう。

ともあれ、かぐや姫が天に昇って行ったその夜の月の形がどんなだったか、その根拠を含めて自信がないような人なら、読んでおいて損はなかろうと思う。
[ 2012/11/15 21:48 ] 本と言葉 歴史の本 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

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