『二年間の休暇』

ジュール・ヴェルヌ『二年間の休暇』

二年間の休暇〈上〉 (偕成社文庫) 二年間の休暇〈下〉―十五少年漂流記 (偕成社文庫)

古くから「十五少年漂流記」の表題で有名なこの作品だが、本書は原題により忠実に、「二年間の休暇」をメインタイトルにしている。
「十五少年漂流記」は原題に忠実ではないとはいえ、その表題で読み継がれて来た歴史があり、なかなかインパクトがあり、作品の内容を端的に表している名題と言えるだろうから、これを捨ててしまうのは忍びない。それで、カバーだけには副題扱いでその歴史的表題が残されている。無論これは、版元の営業戦略的な考えもあるだろうが…。

大変有名な作品だし、何よりとてつもなく面白いから、同書の翻訳は、多数出版されている。本書を買って来てから思い出したのだが、我が家にも、『十五少年漂流記』名義の別の本があった。
その中での本書の特徴はと言えば、上下二分冊で「長い」ということである。むろん、意味もなくただ長いわけではない。「長い」のは単に物理的な特徴を言っただけで、重要なのはその理由である。本書は「完訳版」と銘打たれており、原書に忠実に訳されているらしい。前述の「別の本」と読み比べてみると、そちらはかなり端折られているところがあるのが判る。端折ったところで、面白いには違いないのだけれど、端折られていない方が、より楽しめる。更に本書には、原書にあるブネットの挿絵をすべて収めているそうである。この絵がまた素晴らしい。

タイトルを変えたり(それが原題に忠実だとしても)、訳を改めたり、今までとは違う新しいことをしようとすると、その熱意とは裏腹に、格調が失われたり、それまで持っていた作品に対するイメージが損なわれたり、ということが起こる場合が往々にしてあると思われる。が、本書にはそういうところがなく、非常に読み応えがあって読む者を飽きさせない。
たぶん、訳者が、単に新規の試みをしようとしただけではなく、読み継がれて来たこれまでの「十五少年漂流記」へのリスペクトを忘れていないからだろう。

宇宙戦争』『透明人間』を瞬く間に読み終えてしまった息子のために、同じような興味を持てそうなもので、かつ、ちょっと毛色の違うものを、と思って買って来た。まずは僕が読んで存分に楽しんだ次第。
既に別の「十五少年漂流記」を持っていたことは前述のとおりだが、重ねてこの本を買って、まったく後悔はない。
[ 2013/03/06 15:22 ] 本と言葉 子供の本 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

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