おかしな調査あるいは統計でウソを付く方法

内閣府が行なった「家族の法制に関する世論調査」の中に、「選択的夫婦別氏制度」の調査がある。
その一部を抜粋すると、

  ア)現在の法律を改める必要はない 36.4
  イ)法律を改めてもかまわない 35.5
  ウ)通称として使えるように法律を改める 24
  わからない 4.1

となっている。
これを男女別に見ると、

  男性
  ア)現在の法律を改める必要はない 39.7
  イ)法律を改めてもかまわない 35.5
  ウ)通称として使えるように法律を改める 21.6
  わからない 3.2

  女性
  ア)現在の法律を改める必要はない 33.7
  イ)法律を改めてもかまわない 35.5
  ウ)通称として使えるように法律を改める 26
  わからない 4.8

である。

これは何ともおかしな調査である。
僕はこの問題についてはどちらかといえば気分的反対の立場(理論的反対ではない謂)だが、そのことは措いておく。ここで言いたいのは、夫婦別姓をどう考えるか、ということではなく、統計数字の見方についてである。

この調査結果を見て、ある人はこう言うだろう。
法律を改めることに賛成の人と反対の人とが拮抗している。特に女性では、賛成の人が反対の人を上回っている。
そう言われてみれば、そんな気もするかもしれないし、実際にそういうことを言っている人もいるようである。だが、この調査から、本当にそう言えるだろうか。

ここで言う「法律」とは現行の民法を指すわけだが、それを「改める」ことには2つの意味合いがあって、戸籍上の夫婦別姓を認める、ということと、戸籍上は認めないけれど通称使用を法的に根拠づける、ということとの両義が含まれている。
ウ)が後者なのは明らかだが、ア)は前者だけを指しているのか、両者とも指すのか、極めて曖昧である。イ)は恐らく前者を指しているのだとは思うけれども、明示的に示されてはいない。
設問の意図を推測することはできなくはないけれども、こういった調査の場合、それが完全に明確になっていなければ、それに対する回答もブレて来る。

また、ア)が全面的反対、ウ)が部分的反対(部分的賛成)であるとすれば、イ)は全面的賛成を選択肢にしていなければならないはずである。が、イ)は、「改めることに必ずしも反対しない」程度の人でも選択できる内容になっていて、ア)とは完全には対になっていない。
こういうアンケートで良く見られる、「どちらかと言えば反対」の人は、断固たるア)は選びにくく、「どちらかと言えば賛成」の人がイ)を選ぶのは容易である。設問の設定自体が、夫婦別姓に賛成の人が多くなっているはずだ、という予断を持って作られていると思しい。

たとえば、壁紙の色を青にすることの是非を問う調査があったとして、一方の選択肢を「壁紙の色は青にしたい」にしたのだとすれば、もう一方の選択肢は「壁紙の色は青にしたくない」が妥当である。が、上記の設問は、もう一方を「壁紙の色は青でなくてもかまわない」にしているようなものである。これでは、強く青を希望していない人は、「かまわない」方を選ぶことになるだろう。だからと言って、その結果、「青は壁紙の色として相応しくない」とは言えないはずである。「かまわない」と言った人が、必ずしも、壁紙の色が青では嫌だ、と言っているわけではないからである。

元々、統計というのは客観的なもののように見えて、実際のところは必ずしも無色透明で公正なものではなく、一つの統計から導き出せる結論は一つに限定されるものではない。先に、上記の調査の見方の一つを書いたが、ウ)は戸籍上の夫婦別姓を認めない立場だと言えるから、「戸籍上の夫婦別姓を認めることは、男女とも60%程度の人が反対している」とも言えるのである。同じ数字でも、見方を変えれば正反対と言って良い結論を導き出すことができる。

むろん、統計を取ること自体に、意味がないわけではない。そしてその分析に、真実が含まれていることも多々あるだろう。けれども、統計の取り方が妥当であるか、分析の仕方にウソはないか、ということを考えて掛からないと、統計を元に物を言ったことで、かえって説得力を失うようなことにもなりかねない。

もっとも、そもそもこの問題は、どれだけ切実に必要性を感じている人がいるか、ということが重要なのであって、パーセンテージの多寡は、その次の問題だろうと思うのだが…。
[ 2013/03/25 23:23 ] 理屈・屁理屈 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

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