『箱根の坂』

去年の春、会津へ行く気分を盛り上げるために会津関連の書籍を読んだ。
今年は箱根に行くことにしたので、箱根関連の本を…と思ったのだが、会津ほどの激動の歴史を持っていないから、存外、少ない。これも、「箱根関連の本」というのが妥当かどうかは微妙なところではあるが、何しろタイトルに「箱根」を冠しているから、良しとしよう。

司馬遼太郎『箱根の坂』

新装版 箱根の坂(上) (講談社文庫) 新装版 箱根の坂(中) (講談社文庫) 新装版 箱根の坂(下) (講談社文庫)

早雲庵宗瑞(世に言う北条早雲)の生涯を描いた大長篇歴史小説。
基本的な筋立て自体は史実に則っていることを大前提として、史料の隙間を想像で埋めて作られるのがいわゆる「歴史小説」である。とはいえ、本書では出自にも年齢にも大きく異論のある、確たる史料の極めて少ない人物が描かれているわけだから、その殆んどが想像と創作で補われていることになる。
たとえば、今川義忠の室・北川殿との関係は、まず間違いなく史実ではないだろうし、作中で為される早雲の述懐などにも、根拠があろうとは思われない。その意味では、歴史小説の範疇に入れて良いものかどうか、かなり微妙な線上にあるという気はするものの、史実の大枠については、早雲の預かり知らないことを書いてはいないようだから、時代小説との境界は保っているのだろう。
歴史小説は、史実に沿いながらどれだけ史実と乖離するかというところに醍醐味があるわけで、作家としては、史実の隙間が大きい分、腕の振るいどころがあるかもしれない。
あくまでも司馬遼の書いた早雲で、これを読んで実在の早雲がこんな人物だったと考えるのは大間違いだけれども、名前だけで事蹟をほとんど知ることのなかった人物のことが、若干身近に感じられるのは楽しいことである。

一つ、失敗したこと。
読み始めるのが直前過ぎて、旅行までに読み了えられなかった。「箱根の坂」が出て来たのは、家に帰って日常の生活を取り戻してからである。

コメントの投稿











管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://hoshinahouse.blog101.fc2.com/tb.php/709-d866b2ee