体調不良

先日、この上なく体調が悪く、出掛けなければならない所用があったので外出はしたものの、高熱のためにフラフラになりながら何とかこなしたことがあった。それで思い出した学生時代のこと。

大学4年の時、丁度その年に定年を迎える近世文学の大家T教授の授業を受けていた。春先から夏過ぎまではそれほど問題はなかったと思うのだが、秋口から体調を崩しがちになり、冬になると、ご自宅から駅、駅から大学までの間に当たる冷気のために、大学に着く頃には教室に向かうのも難しいほどの状態になり、休講になることが増えて来た。
それでもT教授の授業を取る機会は今後ないわけだし、他の学生も、事務員や弟子が休講を知らせに来るまで教室でおとなしく待っていた。が、T教授が教壇に立つことは、ついぞなくなっていた。
そんなある日のこと、弟子が教室の入口で、「先生がお話をされます」と言う。そして間もなく、T教授がとても大儀そうなご様子で、教室に入って来られた。
今日は体調が悪くとても授業ができない、誠に申し訳ない、という趣旨のことを述べられて、「このつまらねェ顔を見せたってェことで勘弁してもらいたい」ときっぱりと仰ると、そのまま教室を後にされた。
僕の母校にはその当時エレベーターがなく、教室には階段を昇って来なければならなかった。T教授の体調ではそれだけでも大変なことを、学生は皆判っていたから、そんな挨拶などしなくても誰も文句を言う者はなかったろうに、けじめを付けようと無理をされたのだろう。
T教授の顔を見たのはそれが最後で、僕らが卒業して間もなく亡くなられた。
授業こそなかったものの、定年まで在籍し続けて、卒業生を送り出されたわけである。嗚呼、何とカッコ良い人生だったことか。
[蛇足]
それに引き換え、このエントリを書く切っ掛けとなった僕の体調不良は、実にだらしがない。
[ 2013/06/30 00:52 ] | コメント(2) | TB(0) |  TOP△

そのT先生に「やぁ、T先生、お元気ですか?」と挨拶した僕の師匠・・・。
それにしても、当時はエレベーターどころか、エアコンもないし、オマケに研究室が二人一部屋。そんなに昔でもないのに、びっくりするほど劣悪な環境でしたね。
[ 2013/07/05 02:52 ] [ 編集 ]

Re: 中川@やたナビ さん

そう言えば、そんな話、聞きましたね。
今では富士山の見えるビルですよ。
[ 2013/07/05 22:51 ] [ 編集 ]

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