葬儀空き巣に狙われた話(その4)

葬儀空き巣に狙われた話(その3)」の続き。

告別式、続き。

斎場は車で30分ほど掛かる場所にあり、それに葬儀社の手配したマイクロバスで団体行動をしているわけだから、さすがに途中で戻って来るわけにも行かない。心配は尽きないが、ここまでの経緯を考えれば、電話を架けても通話中の状態で、迂闊に空き巣に入ることも躊躇されるだろう、在宅しているかを確認しようにも、フルーツ店員を何度も訪問させるわけにも行かないだろう…というのはかなり気休めの入った考えだが。ともかくあとは、警察に委ねるしかない。

斎場で一度警察に電話を入れてみると、30分前に警邏して異常なし、これから再度警邏する旨の回答を貰う。
そこまで来ると、もうどうなっても諦めるしかない、という平静な気分にもなって来る。
家に帰り、どうやら無事らしいことが判って、大いに安心したのである。

個々の電話だけなら、ただの嫌がらせのいたずらということも考えられるが、いたずらでフルーツ店員の訪問まではするまい。実際、僕の家にとってはチャイムを鳴らした奴が逃げたというだけで、大した嫌がらせにもなっていないわけだし。
それに、電話を架けて来たのは、(最初の配送業者は僕が出ていないので判らないが)全部別の人物である。なかなか大掛かりで、葬儀空き巣であることは、ほぼ疑いのないところだろう。

葬儀空き巣は、町内の掲示で当たりを付けるらしい。そのため、葬儀社から、掲示はしない方が良いというアドヴァイスを受ける場合もあるようである。
けれども、ご近所の方が亡くなったことを、掲示によって知ることは多い。掲示がなかったために亡くなったことに気づかず、後になって気まずい思いをする場合もある。それに、故人と親しくしていた人が弔問に訪れてくれないというのも、寂しいものである。
訃報の掲示も、一種のご近所付き合いである。だから、葬儀空き巣対策のために掲示を取りやめるというのも、故人にもご近所の方にも申し訳ない。

無事に斎場から戻ってから、お世話になった交番に電話を入れた。
後から考えると、菓子折一つ持って行くくらい悪いことではなかったのではないかと思うのだが、その時は、公務員が市民から物を貰ったりはできないだろうと頭から思い込んでいて、口頭で例を述べるに止めた。
電話に出た警官は、「そのひと言が何よりも嬉しいです」と、本当に嬉しそうに言っていた。恐らく、困った時は救いを求めても、一難去れば、それが警察の当然の務めと、知らん顔をする人が多いのだろう。
むろん、警察の警邏は完璧ではない。警邏の裏を搔いて空き巣に入ることは、プロの窃盗集団なら、難しいことではないだろう。それは判っているが、不安一杯で葬儀に参列するのと、僅かでも安心感を持って参列するのとで、故人を送る気持ちには、当然、差が出る。

その後も、しばらくの間定期的に警邏してくれていた。感謝々々、である。

僕の家を狙った葬儀空き巣は、怪しまれるような真似を多々やっている。思い付きで、「葬儀空き巣でもやってみるか」という程度の、素人に毛の生えたようなものだったのだろう。だから何とか防御できたという面は否定できない。
通夜や葬式の時、留守番を置けるのであれば、それに越したことはない。けれども、なかなかそうもいかない場合も多いわけで、これを読んで、そういう場合の気休めになる方がいれば、と思って書いた。
[蛇足]
町内の掲示、「訃報」というのが一般的だと思うが、場所によっては「悲しいお知らせ」などというものがある。「訃報」が素っ気ないと思うのか、もっと感情を籠めた判りやすいものにしようと思うのか…。

だが、「悲しいお知らせ」などと書かれていても、僕はちっとも悲しくない。感情を抑えた「訃報」の方が、よっぽど悲しい気分になる。
悲しくても感情を表に出さず、涙を堪えるのが、日本古来の文化である。芥川龍之介の「手巾」を読んでみたまえ。
[ 2013/07/20 22:44 ] 日常 | コメント(2) | TB(0) |  TOP△

いや、素人がこんなに手の込んだことはしないと思いますよ。
都会で葬式出すのは、半端じゃなくエネルギーがいりますから、多少不審でも引っかかる人が多いんでしょう。

>掲示がなかったために亡くなったことに気づかず、後になって気まずい思いをする場合もある。

思いっきり気まずい思いをしましたよ。
近所の散髪屋が、祖父の兄さんが歩いているところを見かけて、祖父が退院したと思い込んでて・・・。
葬式から一月ぐらいして、散髪に行ったら「おじいちゃん、元気になったの?」って聞くから、「いえ、死にました・・・」と。
町内会の掲示は出したんですが、家が境界にあるんで気付かなかったようです。
本来なら店の前にでも掲示すべきなんでしょうけど、葬儀屋がやめろというんでやらなかったんです。
[ 2013/07/21 03:44 ] [ 編集 ]

Re: 中川@やたナビ さん

素人というと語弊があるかもしれませんが、計画が粗く行き当たりばったりな感は否めません。そのお蔭で助かったとは言えますが。
手当たり次第に当たってみて、確実に行けそうなところだけ実行するのかもしれませんが…。
[ 2013/07/21 20:05 ] [ 編集 ]

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