附箋を剥がす(14) Including 「全然」(その15)

附箋を剥がす(13) Including 「全然」(その14)」に続いて、『久生十蘭短篇集』(岩波文庫)より。
「蝶の絵」の用例。

主人役の伊沢直樹と山川の教え子だった伊沢の細君の安芸子が、万年理学士の須田克巳とコォジィ・コーナーで領事時代の話をしていたが、伊沢が、そうだ、いいものを聴かせようといって、整理棚の下のほうからオデオンの空色のラベルを貼った古色蒼然たるレコードをひきぬいてきた。(P200L7)


「コォジィ・コーナー」といえば、まずはあのチェーン店を思い浮かべるけれども、きっと別物だろう、と思って調べてみたら、どうやらあのコージーコーナーのようである。
創業が昭和23年(1948)、この作品はその翌年に発表されている。戦後間もない頃の、オシャレな店だったのだろう。

いまのハバネラで思いだしたが、バタヴィアの戦犯裁判にかけられた中に、比島の若い娘たちにたいへんな人気があって、「マリポサ」という愛称で呼ばれていた日本人がいた。(P201L13)


「比島」は戦前戦中の新聞などに始終踊っていた文字だろうから、当時の人には難なく理解できたとは思うのだけれども、現代の、特に若者には、すぐには判らないのではないか、と思ってメモしておいた。
なお、この文庫本には注が一切ない。この年代の作品としては、少々不親切な気もしないではない。漱石や鴎外より、かえって判らないことがある。

本心はなにかいおうとしているんだが、山川はそれをおさえつけている。そういう格闘が僕には感じられた。あの晩の猿の話にしたって、あれァ全然虚構なんだぜ。ニュウギニアにはオランウータンなんか絶対にいない。(P223L1)


否定と呼応しない「全然」の用例の追加。

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