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『ドリトル先生アフリカゆき』

ヒュー・ロフティング『ドリトル先生アフリカゆき』

ドリトル先生アフリカゆき (岩波少年文庫 (021))

古くから名高い児童文学だが、これを購入したのは訳者が井伏鱒二だということも大きい。実際には、ほぼ石井桃子の訳になるようではあるが、この作品の魅力が、訳文の文章の力に負うところが大きいことは、疑いを容れないところである。
むろん、原作のおもしろさを抜きにしてはおもしろい文学たりえないが、内容については語り尽くされているので、敢えてここでは触れない。ただ、長く読まれているのにはそれだけの理由が間違いなくあるとだけは言っておく。

ここで紹介したいのは、ロフティングの預かり知らぬところではあるが、本書の末尾に収められている、岩波書店編集部の無名氏による「読者のみなさまへ」と題する一文である。2002年1月の日付があるので、それより古い版には掲載されていないかもしれないが、非常に素晴らしい文である。作品本文を読んでも、ここまでは読まない方も多いと思うが、是非とも読んでもらいたいものである。

この作品には、人種差別や障害者差別が含まれているという批判があり、現在では出版されていない国もあるようだ。この一文は、この作品へのそういう現在的評価に対する出版書肆としての意思表明である。
古典的な作品の表現について、これほどまでに真摯に力強く表出された文章を目にすることは少ない。しかもそれが「少年文庫」に収められていることに、大きな意義を感じるのである。その最後の部分を、抜粋しておく。

 しかし、あらゆる文学作品は、書かれた時代の制約から自由ではありません。私たちは、(中略)本文中の不適当と思われる表現を最小限改めつつ原作をそのままの形で刊行してきました。その理由は、第三者が故人の作品の根幹に手を加えることは、著作人格権の問題をこえて、現在の人権や差別問題を考えていく上で決して適切な態度とは思えないこと、古典的な文化遺産をまもっていく責務を負う出版社として、賢明ではないと考えるからです。
 もとより、私たちはあらゆる差別に反対し、地球上から差別が根絶されるために努めることが、出版に携わるものの責務であると考えています。読者のみなさまにも、この「ドリトル先生物語」を読まれたことをきっかけに、現代の世界にさまざまな差別が存在している事実を認識し、差別問題についての理解を深めていただきたいのです。私たちはそのような態度こそが、現代において古典的作品を読むことの意義であると信じています。

[ 2010/11/06 19:57 ] 本と言葉 子供の本 | コメント(0) | TB(0) |  TOP△

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